ミツカン水の文化センター「平準化の論理」発見 小規模集落水道を調査 法政大ゼミとの研究で

ミツカン水の文化センターは法政大学の研究室とともに地域が抱える水とコミュニティにかかわる課題をワークショップやフィールドワークを通じて議論し、その解決策を提案する研究活動「みず・ひと・まちの未来モデル」に取り組んでいる。3年目を迎えた2023年度は「小規模集落水道」をテーマに、新潟県村上市の大毎集落を対象地域に選定して研究活動を実施し、研究成果発表会を12月10日に大毎集落開発センターで開催した。

「みず・ひと・まちの未来モデル」のかじ取り役は野田岳仁法政大学現代福祉学部准教授。今回は野田准教授の指導のもと野田ゼミの学生とミツカンの若手社員が「なぜ人々は小規模集落水道を維持し続けるのか」という問いに対する答えを探る研究活動に取り組んだ。

登壇した学生らによると、国は近い将来の担い手不足が懸念される小規模集落水道の代替案として上水道システムの導入や給水車による送水を検討しているが、集落単位の水道組合を維持している人々はこのような提案に消極的で集落単位の水道組合を維持し続けなければならないと考えているという。

大毎集落は戸数116戸、人口340人ほどの農業集落。簡易水道が導入されているにもかかわらず24年で100周年を迎える大毎水道組合をはじめ集落独自の7つの水道組合を維持し続けている。その水道の管理には費用がかかっているものの、水の利用自体は無料。貨幣交換できない共有資源として存在しているという。

一方、同集落にはとなり組をはじめ様々な社会集団が存在している。研究ではとなり組の運営を調査する中で平等性よりも公平性を重視し、各家の権利と義務(負担)が公平になるように工夫されていることを発見。これを「平準化の論理」としたうえで「この論理はむら運営の基本原理として至るところに貫かれている」とした。

水道組合、特に大毎水道をめぐる動きを調査する中で、93年に大毎水道の水を供給した水汲み場「吉祥清水」を整備したこと、22年度の集落の総会で大毎集落の水源地の所有権購入を決議したことに着目。「大毎水道をみんなのものにすることによって(集落内での水をめぐる)格差を是正していこうとした」「各家の権利と義務や負担が公平になるようにした」としつつ、「これは平準化の論理と密接に結び付いたもの」とした。

研究を通して「小規模集落水道の運営にはむらの秩序を支える平準化の論理が貫かれていた」としたうえで「小規模集落水道を廃止し、上水道システムに移行したとすると、むらの秩序を支えていた小規模集落水道がなくなってしまうため、むらの秩序の切り崩しに直結する可能性があるのではないか」と分析。「なぜ小規模集落水道を維持し続けるのか」との問いに対し、「それは水道組合がむらの秩序の維持と不可分の存在だから」との答えを導き出した。

野田准教授は大毎集落について「なぜこんなに高度な自治機能があるのか、なぜ100年近くも小規模集落水道が続いてきたのか。そのからくりを明らかにするため調査を進めてきた」としたうえで「不公平を是正し、平準化していく発想があるからこそ、高度な自治機能が維持されていると思うし、24年で100周年を迎える大毎水道が維持できているのではないかと思う」と語った。

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