「病気、生活が苦しい人の支援に」 21年に死去した元看護師の思い、市社協に4900万円寄付

新野良子さんのいとこらが手塚宮雄会長(右端)に目録を手渡した=米沢市すこやかセンター

 「自分の死後、財産は病気で苦しむ人、生活が苦しい人の支援に役立ててほしい」。2021年に70歳で亡くなった元看護師の新野良子さん=米沢市御廟1丁目=が、晩年に交流のあった関係者に託した思いを受け、親族などが20日、市社会福祉協議会(手塚宮雄会長)に遺産約4900万円を寄付した。1人暮らしだった新野さんは遺産を相続する家族や兄弟がいなかったからで、手塚会長は「市民に役立つ事業に使いたい」と感謝している。

 新野さんは米沢商業高から福島県内の看護学校に進学。卒業後、東京の慶応義塾大学病院で働いた。その後、地元に戻り、米沢市立病院で仕事を続けたが、病気を理由に58歳で退職した。患ったのは遺伝性の脊髄小脳変性症。小脳の神経細胞が徐々に減少し、運動がスムーズにできなくなる病気で、市立病院在職中の04年ごろに発症した。

 死期を悟り、遺産について司法書士の猪口春生さん(69)=米沢市=に相談した。独身で両親は既に他界し、兄弟もいなかったからだ。通常、遺産の使い道を記した遺言書などがない場合、財産は国庫に帰属する。そこで、遺言公正証書を作成する猪口さんの提案を受けた上で、市社協に寄付することを選択した。

 遺産に対し「今までお世話になった方々、そして市民の社会福祉のために有効に使ってほしい」との思いを託したという。普段から国連児童基金(ユニセフ)や国境なき医師団にも定期的に寄付をしていたといい、いとこの高田伯泰さん(79)は「気丈だがとても優しい人だった」とおもんぱかる。

 この日、高田さんと堤全隆さん(74)、猪口さんが、市すこやかセンターを訪れ、手塚会長に目録を手渡した。手塚会長は「清らかな心を持った新野さんの期待に応えられるようにしたい」と感謝の言葉を述べていた。同社協への寄付としては過去最高額だという。

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