インパクトは「加速」して当てよう/ねぇ、キース!教えてアプローチ(後編)

サンドウェッジのバウンスはなんと4度(撮影/服部謙二郎)

PGAツアーで屈指の飛ばし屋として知られる、キース・ミッチェル。今回、彼に聞くレッスン(全2回)のテーマはドライバー!…ではなく、「ウェッジテクニック」だ。ロングゲームの豪打とは裏腹に、フワッとした柔らかい球で寄せるミッチェル流の極意をじっくりと教えてもらった。(取材・構成/服部謙二郎)

「60yd」を境に打ち方が変わってくる

―「距離感」の作り方について教えてください。どうしたら、ミッチェルさんみたいに繊細な距離感で打てますか。

それはもう「練習して」と言うしかないよ(笑)。でも正直、たとえば30ydと33ydをどう打ち分けるかと言われても、あまりに微妙すぎてちょっと答えられないんだ。おそらく、スイングのスピードやインパクトロフトが違うとは思うけど、見た目にはまったくと言っていいほど違いはないと思う。ターゲットを見て、体が勝手に反応するというのが本当のところじゃないかな。

残り距離を見て体が勝手に反応するというミッチェル(撮影/服部謙二郎)

―そこまで繊細ではない距離差についてはどうでしょうか。たとえば30ydと50ydの場合は?

60ydくらいを境に、打ち方がはっきり変わってくるかな。60ydくらいだと、やっぱりシャフトリーン(ハンドファースト)を強くして、ボールをつぶして打つということが必要になってくる。それより短い距離だとボールをつぶす必要がないから、シャフトリーンは最小限にして、フェースにボールを乗せて運ぶような感覚で打っていく感じになるよ。

球を上げるときのアプローチ(30yd)(撮影/服部謙二郎)

―弾道の高さはどのくらいのイメージですか。

ボクは60度のウェッジを使っているけど、アドレスの時にそれを65度とか70度くらいになるように開いて構えるんだ。だから、その開いたロフトの通りの高さに打ち出すイメージかな。ボールフライトの種類とすれば「ミッド弾道」だね。それより高く上げてしまうとボールが止まりすぎてしまうし、それより低く出てしまうと止まるまでの距離が長くなってしまって、直感的に寄せにくいんだ。

―日本では、「振り幅で距離をコントロールする」というレッスンも多いですが、ミッチェルさんの場合はどうでしょう。距離に対する振り幅の目安は持っていますか。
その答えは「イエス」でもあり「ノー」でもあるよ。たしかに、「このくらいの大きさでスイングしたら何ヤードくらい飛ぶ」という目安はあっていいと思う。時計の文字盤で「9時から3時まで」とかよく言うアレだよね。ボクにも、平らなところで単純にキャリーを一定にするだけなら、振り幅は「このくらい」という目安はあるけど、実際のラウンドだと、そのやり方だとうまく寄せられないんだ。1球ごとにライが違うし、そこからグリーンまでの状況も変わるからね。カップまで30ydだったら、いつも同じ振り幅で打てばいいというわけじゃない。そういう意味では、ボクの中では「ノー」のほうが強いかな。

―なるほど。それでもあえて聞きたいのですが、30yd打つときの振り幅の目安はどれくらいですか。

テークバックで左腕が「9時」になるくらいかな。クラブを基準にする人もいると思うけど、ボクは腕の位置のほうを意識しているよ。

30ydの目安は腕が9時を指す(撮影/服部謙二郎)

―60度のウェッジを使っているということでしたが、バウンスは何度ですか。

ボクはフェースを開いて、なおかつシャフトをあまり傾けないで打つタイプだから、あまりバウンスは大きくなくていいんだ。だから、60度のウェッジのバウンスは4度にしているよ。その人の打ち方によって必要なバウンスの大きさは変わる。たとえば、すごくシャフトリーンを強くして打つ人だったら、その分、バウンスは増やさなきゃいけないよね。フェースを開かないで打つ人も、バウンスは大きいほうがいい。でも、どんな人にも共通して言えるのは、バウンスは「使ったほうがいい」ということ。ヘッドが刺さったりしてうまく抜けないというような人は、一度バウンスの設定を見直してみるといいかもしれないね。

ターゲットを見ながらテークバックするドリルをやってみよう(撮影/服部謙二郎)

――最後に、アプローチがあまり得意でないアマチュアに、何かアドバイスをもらえますか。

アマチュアは、テークバックでクラブを大きく上げすぎている人が多いね。ターゲットまでの距離に対してテークバックが大きすぎると、脳が「スピードを落とせ」という命令を勝手に出してしまうから、インパクトでヘッドが減速しながら当たってしまうんだ。インパクトというのは必ず加速して当てないと、狙った通りの結果は得られにくい。だから、しっかりターゲットを見て、脳が「スピードを上げろ」と命令を出すであろう大きさまでテークバックするというのが、距離感を合わせるためのいちばんのポイントだよ。

低く出すときのアプローチ(撮影/服部謙二郎)

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