2023年選挙管理委員会のデータ公開手法に変化はあったのか?問題となっている政治資金収支報告書等は総務省で機械処理可能な方法で公開すべき時期ではないだろうか?(データアナリスト 渡邊 秀成)

この1年、選挙管理委員会のDX推進につながる提案を盛り込んだ記事を投稿してきました。行政DX等の言葉も盛んに叫ばれる中で、2023年統一地方選挙時においては、各選挙管理委員会が公表する選挙データ等についても変化があるのではないか?という期待もありました。

総務省は令和2年(2020年)2月18日に統計表における機械判読可能なデータの表記方法の統一ルールの策定という報道資料をウェブサイトに公開をし、具体的なデータ作成方法についてのマニュアル(PDF)についても公開がされています。

このような指針が総務省から示されており具体的なマニュアルが公表されているのであれば、これらのデータ形式に沿ったデータ公開をする選挙管理委員会が増えてくるのではないか?とも思いましたが、2023年12月に今年の選管データの公開形式について振り返ると大きな変化はありませんでした。

自治体ごとに異なる公開形式で、残るデータ活用の不便さ

多くの都道府県、市区町村で独自形式でのデータ公開を行っている事が多いのでデータの一括処理等ができない等、公開データを利活用する不便さについては解決されないままです。

同じ公職選挙法に基づいて行われる選挙ですが、公開されるデータ形式については選管ごとに統一性がないというのも考えてみれば不思議な話です。

投票率向上を考えているのであれば、投票率の低い地域、高い地域の共通点の割り出し等は必要な作業となります。そのような課題を解決しようと考えた場合、全都道府県市区町村でデータ形式が統一されていれば投票率の高い都道府県市区町村、投票所はどこであるのかは一瞬で選管職員は調べる事ができます。また住民も自分が住んでいる地域の投票率は他と比較をしてどうなのかを知る事ができます。

選挙データを一つの自治体情報ではなく、日本全国市区町村の財産であるという考え方で、データ形式を共通化し使い勝手を良くすれば、さまざまな場面で選挙データを活用することも可能です。

公的機関が全国の選挙データ集積を

そして選挙運動費用収支報告書もオンライン上で誰もが調べられるようになることが必要だと思います。オンライン上で誰でもデータに接する事ができるようになれば、選挙運動に関する透明性も高まりますし、どのようなことが選挙運動時に行われていたのかを検証することも可能になります。

総務省、公益財団法人明るい選挙推進協会等が国勢調査データベースのような感じで、全都道府県市区町村の選挙運動収支報告書データを閲覧、ダウンロードできるようになると選挙後に各種検証もしやすく、データが集積してくれば歴史的な資料にもなります。

アメリカの Federal Election Commission(FEC) が公開しているデータベースのようなものが総務省、公益財団法人明るい選挙推進協会、国立国会図書館等の公的機関で運営されれば選挙に対する透明性が高まるものと思われます。(筆者注※ただ2023年11月にFECデータベースの正確性に疑問がある事が取り上げられている点に留意する必要はありそうです)

Federal Election Commission(FEC) が公開しているデータベース

「政治とカネ」の透明化にはデータ公開からもアプローチを!

また9月、11月には政党交付金使途等報告書、政治資金収支報告書の公表が総務省からありました。

これら二つの報告書は紙媒体をスキャンしたデータ形式で公開されています。

政党交付金使途等報告書(実際に閲覧してみてください)はプリントアウトすることもできず、オンライン上で閲覧するだけという制限がかかっております。

そのため政治団体ごとの集計を表計算ソフト等で行おうとしようとすると、画像認識をさせた上で、認識した数値が正確であったのかどうかを確認する必要があります。

AI等で自動認識させればいいのではないか?という意見もありますが、文字認識が100%ではないので認識データをチェックする必要があります。収支報告書等がオンライン提出(使い勝手が悪いという話も聞きますが)やExcelシートによる提出がなされているものは、

元電子データがあるのですから、そのデータを公開してほしいと思います。そうすれば国民がデータをダウンロードしてさまざまな検証を行う事ができるようになります。

それらのデータを用いてデータ処理に関する授業等を学校等ですれば、政治に関心を持つ学生も増えると思いますし、さまざまな人が検証作業ができるのですから、政治に対する透明性が高まり、政治について考えるきっかけが増えるものと思われます。間接的に投票率の向上にもつながるのではないでしょうか?

行政運営に関わるさまざまな分野でDX化等が盛んに言われますが、政治に関する信頼性を高めるためにも、選挙、政治資金等に関する部分の機械的処理可能な電子化による公開、

オンライン検索等を充実させることが必要ではないでしょうか?

政治に対する国民の信頼を高めるためにも、行政情報、国会議員、地方議員に関する情報の透明性を高めることが必要になってきているように思えます。

今回は2023年を選挙、政治関係のデータに関して振り返ってみました。

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