内密出産、2年で21人 熊本、未受診8割

熊本市の慈恵病院=2022年9月

 熊本市の慈恵病院は21日、孤立出産を防ぐため、病院以外に身元を明かさない「内密出産」が、2021年12月の初事例から2年で計21例あったと発表した。約8割の16人が医療機関を受診していなかった。長距離移動を余儀なくされた人もいて、蓮田健院長は記者会見で「妊婦はさまざまな事情を抱え、危機的状況にある」と指摘。法整備し、各都道府県に1カ所は内密出産が可能な医療機関が必要だと訴えた。

 病院によると、21人全員が家族との関係を「厳しい」とし、うち18人は内密出産に至った第一の理由を親や家族、行政に「知られたくない」としていた。

 21人のうち、約4割の8人が20歳未満の若年妊娠。居住地は関東以北が8人、熊本以外の九州が7人、中国・四国、近畿がそれぞれ3人で、多くが新幹線を使い、全国から身を寄せていた。

 一方で、9人が出産後に身元を明かし、内密出産を撤回しており、揺れ動いている様子が浮き彫りになった。生まれた子どもの処遇については、2人は特別養子縁組が決まり、8人も縁組に向け手続き中だという。

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