創作絵本「ばあちゃんちのパスポート」を贈呈 奄美市=復帰運動継承、全小中学校に配布

鹿児島県奄美群島が日本復帰70年の節目(12月25日)を迎えるまで1週間を切った19日、奄美市がメモリアル事業の一環と制作した創作絵本「ばあちゃんちのパスポート」の贈呈式が、同市の名瀬小学校(上村英樹校長、児童320人)であった。5・6年生児童や制作関係者ら約120人が出席。絵本の完成を祝うとともに、先人たちが非暴力、無血で成し遂げた日本復帰への思い、歴史を後世に語り継ぐ決意を新たにした。

完成した創作絵本を手にする安田壮平市長と名瀬小の白濱ひなのさん(左)=12月19日、奄美市

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絵本制作は、復帰運動を口承する人が減少する中、島の歴史や記憶の風化を防ぎ、次世代に伝えることが目的。メモリアル事業実行委員会の奄美博物館学芸員・照屋真澄さん(35)が企画、ストーリーを作成。挿絵を、市民総決起大会など復帰運動の舞台になった同校に依頼し、5・6年の有志児童23人が担当した。

贈呈式で、安田壮平市長が「祖国復帰に懸けた先人の熱意や団結力、行動力を次世代へつなぐことが、今を生きる私たちの敬意と感謝の行動。絵本には故郷を学ぶ楽しさ、戦争を繰り返さない決意、島の歴史を紡ぐ大切さを込めた」とあいさつ。奄美博物館元館長の久伸博さんが記念講話を行った。

挿絵1ページを手掛けた、6年の白濱ひなのさん(12)は「今の私たちの生活が当たり前でなく、当時の人たちの努力が紡がれて成り立っていることが、絵本を通して多くの人に伝わればいいなと思う」と話した。

創作絵本は、全28ページ、20×20㌢、ハードカバー。奄美に住む姉弟2人が、祖母の家で古いパスポートを見つけたことを機に、島の歴史をたどるというオリジナル物語。市内の小中学校全28校に贈呈される。

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