ささくれは、剥くな!! 細菌やウイルスにとって“侵入し放題のドア”

ささくれは無理に剥かず、爪切りなどで切り落として(写真:west/PIXTA)

爪のまわりの皮膚が剝けてしまう、ささくれ。

寒くなると繰り返し剝けて、見た目も悪く、時には痛みも出るやっかいなトラブルだ。

「ささくれができたら、触りすぎや、引っ張って剝くのは絶対にダメ。ひどく痛んで赤く腫れ、思いがけない炎症を引き起こす恐れがあります」

そう忠告するのは、やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院の宇井千穂先生。指回りは、皮膚の成長の途中で爪の形に添って引っ張られるため、部分的に皮膚が裂けやすいという。

「ささくれの根元は、これから成長する若い健康な肌。無理に剝くと根元部分が傷つき、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌などの細菌や、ヘルペスウイルス、カンジダなどの真菌が侵入しやすくなります。

傷というのは“ドアが開きっぱなし”になっているようなもの。人間の体内は温度が一定していて栄養も豊富で、細菌やウイルスにとって過ごしやすいため、ささくれでできた小さな傷でも、すぐに侵入し、膿がたまる化膿性爪囲炎(ひょうそ)を引き起こしてしまうんです」(宇井先生、以下同)

怖そうな細菌名だが、菌自体は人の手指や皮膚、粘膜などに通常生息している常在菌だという。

「ヘルペスウイルスも常在ウイルスで、多くの人が感染しています。通常は免疫機能が働いているため悪さはしないのですが、体力が落ちたり疲れがたまったりして免疫力が落ちると活性化します。

ささくれは年中できますが、冬は空気が乾燥しやすく、また体が冷えて体温が低下することで免疫力が弱まっているため、炎症を起こしやすいと考えられます」

■ささくれだからと甘く見ず、炎症を起こしたら皮膚科などを受診

大抵は指先だけの症状にとどまるが、まれに放置しすぎると体内に拡大する恐れもあるという。

「炎症が長引くと、関節が硬くなり指の曲げ伸ばしが困難になる『屈筋腱腱鞘滑膜炎』に発展することも。指先は骨に近く、悪化して感染が進むと骨に感染する『骨髄炎』や、リンパ管を通って体内に広がれば『リンパ管炎』になるリスクも高まります」

骨髄炎は最悪、壊死や病的骨折を起こすことも。

「注意すべきは、免疫力が下がっている人、子供やシニア層。菌やウイルスが侵入したとき抵抗力が弱く、炎症を起こしやすいんです」

ささくれを防ぐためにできることはあるだろうか。

「家事で水をよく使う主婦や、水仕事の多い美容師は、とくにささくれができやすいので、水を使ったあとは、ハンドクリームなどでこまめに保湿をしましょう。また、お湯は刺激になり、水分を蒸散させて皮膚の乾燥を促すため、風呂の長湯を避け、家事はゴム手袋を着用、就寝時は保湿用の手袋がおすすめです」

それでも、ささくれができてしまったら、自然にはがれるのを待ち、触らないことが大切だという。服などに引っ掛かるのが気になる場合は、爪切りやハサミなどで根元からカットしよう。ただし、ばんそうこうで保護するのはNG。血流障害を引き起こしたり、粘着部分で皮膚がかぶれたりする原因になる。

この冬、ささくれにはご注意を!

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