奈良「鹿苑」検討部会が初会合 保護管理基準を議論 シカと人の共存、農作物被害防止

鹿のあり方等検討部会の初会合=21日、県庁

 奈良公園の鹿を保護する施設「鹿苑」(奈良市)内に設けられた特別柵の鹿の収容環境が不適切との指摘を受け、奈良県は「鹿苑のあり方等検討部会」(委員長・村上興正元京都大学大学院理学研究科講師、7人)を立ち上げ、21日に初会合を開いた。有識者らで構成され、今後、約1年間かけて特別柵の鹿の適切な収容頭数や天然記念物「奈良のシカ」の保護管理基準について議論をしていく。

 県の委託を受け、鹿苑を運営する「奈良の鹿愛護会」の獣医師が特別柵に収容されている鹿に「十分なエサが与えられていない」などとして県や奈良市に通報。県、市は調査の結果、同柵内の収容環境は不適切だと判断した。

 一方で特別柵は1979(昭和54)年に農家が提起した鹿害訴訟をきっかけに設けられた四つの保護区分のうち、保護地区と管理地区の間にある「緩衝地区」で農作物を荒らした鹿などを生け捕りにし、収容する施設で、調査では「収容頭数が適正に飼育できる頭数を超過している」と指摘した。

 これらの結果を受け、県は既存の「奈良のシカ保護管理計画検討委員会」に新たに検討部会を設置。この日は有識者委員とオブザーバーの文化庁文化財調査官や鹿害阻止農家組合長、市内農業関係者らが出席し、議論をした。奈良市は事務局として参加した。

 冒頭、山下真知事は「天然記念物の保護、人と鹿の共存、農作物被害をなくすためにはどうすれば良いか議論をいただきたい」とあいさつ。この後、県奈良公園室の担当者が県や市の調査結果や奈良の鹿の保護管理基準などを説明した。

 意見交換では「県の調査の評価基準となっている動物福祉の理念を実現するには奈良公園を柵で囲わないといけない」と調査結果を疑問視する声や、「奈良の鹿の種の保存をどうするのか。交雑しても良いと考えるのかも議論が必要」、「農家としては基本的には農地を柵で囲うより、捕獲してほしいという意見が多い」などさまざまな意見が飛び交った。

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