銭湯スタンプラリー人気 県公衆浴場業組合企画、45軒全制覇続々と

銭湯スタンプラリーをPRする中谷理事長(前列中央)と県内の経営者ら

 富山県内45軒の銭湯を巡るスタンプラリー企画「富山銭湯めぐり」が人気を集めている。県公衆浴場業生活衛生同業組合が10月中旬に始め、2カ月で101人が全銭湯を制覇。「頑張って営業している銭湯を応援したい」「富山にこんな銭湯があるなんて知らなかった」との声が組合に寄せられている。

 常連客向けの小規模なスタンプラリーは過去にも実施してきたが、県内全域を対象にした企画は初めて。スタンプラリーの冊子には各浴場の写真が付き、営業時間や定休日などの基本情報を掲載。「大空襲の焼け野原に創業」「女性3人が交代で務める『番台ガールズ』も評判」など特徴も紹介している。

 全45軒を制覇した人には、県公衆浴場業生活衛生同業組合副理事長で高原鉱泉(富山市)を営む田村慎治さん(58)が手作りした、制覇順のナンバー入り下足札と富山銭湯マイスターの認定証が贈られる。先着100人への特典だったオリジナルTシャツは配布枚数に達した。最も早く制覇した葛󠄀坂竜也さん(53)=富山市八尾町東新町=は「6日間で全て回り、修行のようだった。銭湯が活気づいたらいい」と願った。

 スタンプラリーの開始以降10~20%ほど客が増えた店もあり、「予想以上の反響」「今後の経営に悩んでいたが、また頑張ろうと思えた」との声が上がっている。憩の湯(高岡市)を経営する同組合理事長の中谷健太郎さん(52)は「銭湯は地域に根付いているため、外から足を運びにくい印象もある。スタンプラリーの冊子をパスポート代わりにして若い世代にも気軽に来てほしい」と語った。

 スタンプラリーは来年2月29日までで冊子は各銭湯や旅館などにある。

公衆浴場の減少に危機感 廃業寸前に継承の例も

 スタンプラリー実施の背景には公衆浴場の減少がある。全国の銭湯は昭和40年代の約1万8000軒をピークに右肩下がりが続き、本年度は1755軒になった。人口10万人当たりの銭湯の数が全国トップクラスの県内も昭和40年代の300軒から45軒にまで減った。競合するスーパー銭湯の増加や燃料費の高騰、設備の老朽化、後継者不足が主な原因とされる。

 県公衆浴場業生活衛生同業組合の統計によると1店舗当たりの客のうち70~80%が常連で、その約7割が高齢者。経営者たちの「歯止めをかけたい」との思いがスタンプラリーという形になった。

 スタンプラリーのほか、45軒が協力して牛乳の無料配布キャンペーンや、呉羽梨などを使った薬草風呂にも取り組む。2019年からことしにかけて、新しい経営者が廃業寸前の銭湯を継いだケースが4例あるなど、明るい兆しもある。

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