一陽来復

 一陽来復とは、日脚が伸び始め、太陽の光が戻ってくるさまをいう。やがて「凶事のあとに幸運が訪れる」という意味にもなった。きょうは冬至で、この日を境に昼間の時間が長くなる。冬至の異名を一陽来復という▲日の光が戻るといっても、寒さは今から厳しさを増す。〈冬至 冬なか 冬はじめ〉。冬の真ん中に当たり、厳寒へ向かう今の時季はこう言い表される。きのうは時折、雪が降り、〈冬はじめ〉、冬本番の到来を思わせた▲「雪がしんしんと降る」とは、音もなく雪が舞い降りるさまをいう。路面凍結、交通の乱れは困りものだが、寒さを際立たせる“無音の情景”を心に刻んだ人も多いだろう▲今年、心に残った音は何ですか? 補聴器などを製造するリオン(東京)が11月、全国の千人に聞いたところ、1位は「無音」の対極、野球の侍ジャパンが「世界一に輝いた時の大歓声」だった▲2位は「花火大会や祭りの音」。コロナ禍では「繁華街、観光地の静けさ」がトップだったことを思えば、静から動、ため息から歓喜へと、心に響く音が“変質”したのが分かる▲しんしんと雪はきょう昼過ぎまで降るらしい。「雪、大丈夫だった?」。雪という字の「ヨ」の部分は万物を掃き清める箒(ほうき)ともいうが、一陽来復の温かな声が雪のあとに残るといい。(徹)

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