新橋ビル爆発の“現場”は今 焼け残った外壁に生々しい焦げ跡、営業再開のテナントも…

現場ビルは“サラリーマンの街”新橋にある(12月15日/弁護士JP編集部)

今年7月、東京・新橋のビルで起きた爆発事故に衝撃を受けた人は多いのではないだろうか。壁や窓ガラスの破片、ビル内にあったと見られる備品の数々が周辺の道路に散乱する光景は、あまりに日常とかけ離れていた。

爆発したのはビル2階の飲食店だったものの、同店ではガス契約を結んでおらず、原因は上階の空き店舗からのガス漏れと見られている。職場や自宅、偶然入った飲食店などにおいて、「他の部屋からのガス漏れ」に思わぬかたちで巻き込まれる可能性を想像し、ゾッとした人もいるかもしれない。

あの現場は今、どうなっているのか。忘年会シーズン真っただ中の金曜夕方、多くのサラリーマンが行き交う新橋に向かった。

足場に囲まれた現場ビル

現場ビルは、JR新橋駅烏森口からまっすぐ300mほど進んだところにある。

外壁が吹き飛び、激しい炎に包まれるなど大きな爆発事故だったことから、建物自体が取り壊されている可能性も視野に入れていたが、そのビルは足場に囲まれて夜闇の中ひっそりとたたずんでいた。

爆発で吹き飛んだ2階の外壁部分にはカバーが掛けられ、焼け残った外壁には焦げた跡が見られる。

事故から5か月以上たった今、一部のテナントはこのビルで営業再開しているものの、公式サイトやSNSなどを確認すると、当時入居していたほとんどのテナントはいまだに臨時休業しているか、すでに別の場所へと移転しているようだった。

※ビル1階外壁のテナント看板は、営業再開、臨時休業中、移転済みにかかわらずすべてライトアップされている

かつて新橋サラリーマンの“いこいの場”としてにぎわっていた1階の飲食店は、爆発事故の半年ほど前にリニューアルオープンしたばかりだったという。

ビル内部には修繕工事のためのシートが敷かれていた。

付近を歩く人に声をかけると、仕事でたびたび新橋を訪れるという30代の女性会社員は「爆発の規模から取り壊されていると思ったが、ビルが残っていて驚いた。臨時休業中の飲食店が営業再開したら訪れたい」と事故について話してくれた。

住居でも“巻き添え”のリスクが…

事故当時、爆発元となった飲食店の店長が「ガス臭いと感じながらタバコを吸おうとライターをつけた」と話しているとの報道がなされ、批判が集まっていた。しかし事故から9日後の7月12日、当該店舗の公式サイトには以下のコメントが掲載されている。

「一部報道において、当店店長が、捜査関係者に対し、ガスの臭いを認識しながらライターに火を付けたことが本件の原因であると説明した旨の報道がなされており、当該報道を基に、一部SNS上で、同人の行動を非難する言動がなされております。しかしながら、当店店長が捜査当局に対しそのような説明をした事実はございません」

本来、無色無臭のガスには安全のためわざと臭いがつけられているが、今回の事故のように気づけないケースもある。ましてや、自身がガス契約していないとなれば、まさか部屋にガスが充満しているとは夢にも思わなかったのではないだろうか。

他の部屋からのガス漏れは住居においても“人ごと”ではなく、爆発のみならず一酸化炭素中毒の巻き添えになるリスクもあり、死亡例も存在する。

現状、一般家庭におけるガス警報器の設置は義務付けられていないが、経産省によると、LPガスの事故だけでも国内で年間200件前後発生しているという。

新橋で爆発した店舗のように、ガス契約がない場合にも警報器を設置するのかといった点で議論の余地はあるが、自分が気をつけるだけでは安全を守り切れない以上、異常をいち早く知らせてくれる警報器の設置を検討してみてもよいかもしれない。

※記事中の写真はすべて12月15日に弁護士JP編集部撮影

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