2025年導入エクストリームHの“水素燃料電池”搭載プロトタイプがシェイクダウン「予定より早い進捗」

 直近にもFIA国際自動車連盟やF1との合同ワーキンググループを立ち上げ、2025年には世界初の水素燃料モータースポーツ・シリーズへと移行するプランを表明している『Extreme H(エクストリームH)』が、新しいチャンピオンシップの開始に先立ちシリーズ最初のプロトタイプ・シャシーのシェイクダウンに成功。開発における「最初の大きなマイルストーンを完了した」ことを明かした。

 この12月初旬に南米大陸で“シーズン3”を終えたばかりのワンメイク電動オフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』だが、フルBEVで争われる同選手権の発展形として、将来的な導入を計画する水素を動力としたプロトタイプのティーザー画像(タイトル写真)を公開。先日のテストで無事にトラックデビューを果たし、初回テストとしては有望な走行距離を記録した。

 2024年後半の本格的なお披露目を目指すタイムスケジュールに対し「厳格なテストプログラムが進行中」というエクストリームH用シャシーは、史上初のオフロード水素レーシング・シリーズである2025年のチャンピオンシップ投入に向け「モビリティのイノベーションとソリューションのテストベッドとして設計された」という。

 その技術的詳細はまだ不明な点が多いものの、今回のアナウンスにより約1年後のデビュー時には「水素燃料電池を搭載する」モデルが日の目を見ることが判明した。

「予定より早くエクストリームH用プロトタイプのシェイクダウンを完了したことは、来る2025年のラウンチに向け大きく準備が進んでいることの表れだ」と語るのは、シリーズ創設者兼CEOのアレハンドロ・アガグ。

「我々としても、水素を動力とするコンセプトを初公開できることに興奮している。これはモータースポーツにおいて画期的なものになると感じているんだ。エキサイティングな水素の未来に向けていち早く移行し、史上初のオフロード水素レースの世界選手権を立ち上げる上で非常に重要な第一歩になった」

今回のアナウンスにより約1年後のデビュー時には「水素燃料電池を搭載する」モデルが日の目を見ることが判明した(写真はエクストリームE)
エクストリームH車両のイメージカット。水素を使用したオフロードレースとなる。

■早ければ2026年にもFIA格式の世界選手権に

 同じくシリーズのテクニカルディレクターを務めるマーク・グレインも「準備は順調に進んでおり、シリーズのプロトタイプ・シャシーの最初のシェイクダウンを成功させたことは、重要なマイルストーンだ」と付け加えた。

「これはチームの多大な努力によるものであり、素晴らしい成果を上げたスパーク・レーシング・テクノロジーズ(ワンメイクシャシー設計、供給を担当)のサポートがなければ、この最初の一歩は達成できなかっただろう」と続けたグレイン。

「2025年のエクストリームHのラウンチに向け、やるべきことはまだたくさんあるが、我々はコンセプトの進捗に満足している。この技術規定は強力なパフォーマンスレベルを実現し、モータースポーツだけでなく自動車産業のイノベーションの面でも常識を打ち破ることができると信じている。ただし、モビリティの将来像は(水素だけでなく)より広範囲に渡る可能性も秘めているけどね」

 前述の水素ワーキンググループは、そのグレインとF1のチーフテクニカルオフィサーを務めるパット・シモンズ、そしてFIAのシングルシーター・ディレクターの職にあるニコラス・トンバジスらを含む3団体すべての代表者で構成され、モータースポーツやより幅広いモビリティにおける水素の開発と潜在的な応用を評価するべく、戦略的提携における専門知識の集合体として機能することが狙われている。

 先のタイムスケジュールでは2025年度にエクストリームHが無事初年度を終え、必要な基準が満たされた場合には、2026年からFIA格式の世界選手権となる予定で、2021年に創設されたエクストリームEからわずかな年月を経て、他の7つの公式FIA世界選手権の仲間入りを果たす。

「素晴らしい成果を上げたSpark Racing Technology(ワンメイクシャシー設計、供給を担当)のサポートがなければ、この最初の一歩は達成できなかっただろう」とテクニカルディレクターを務めるマーク・グレイン(写真はエクストリームE)

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