新東名工事残るは25km 急こう配の山、8割が「橋」「トンネル」…『最難関の工事区間』に潜入取材

堀優奈アナウンサー:「今年も県内はリニア問題に揺れた一年でした。そして、まだ静岡工区の着工のメドは経っていません。ただ、その一方で、全線開通に向けて、今工事が佳境に入っている日本の大動脈があります。それが『新東名高速道路』 残りの区間が開通すれば、県内から首都圏へのアクセスが格段に良くなり、渋滞の緩和や観光業の活性化など、静岡県にも様々なメリットが期待されています」

2012年に開通した新東名高速道路。1969年に全線開通した東名高速道路と並ぶ日本の大動脈として、渋滞の緩和や災害時の迂回路としての役割を担ってきました。

神奈川海老名市と愛知県豊田市を結ぶおよそ250キロのうち、すでに全体の9割が開通。残すは新御殿場インターチェンジと神奈川県の新秦野インターチェンジを結ぶおよそ25キロの区間のみとなっています。

堀優奈アナウンサー:「ただ、この未開通区間が、新東名高速道路の建設において最も難しい“最難関の工事区間”と言われています。その理由は、この地形にあります」

“最難関”だけあって、実際に建設作業は難航。今年度中に開通予定だった計画が、実際は4年遅れの2027年度にずれ込んでいます。

そんな中、今回、番組のカメラが未開通区間の建設現場に潜入取材。この区間が開通すれば、静岡県から首都圏へのアクセスも格段に良くなる全線開通への“ラストピース”“最難関”と呼ばれる現場を徹底調査しました。

取材班が向かったのは静岡県との県境にある神奈川県山北町。山道を上り、向かった先には…。

堀アナ:「うわ、すごい。立派な橋。橋脚部分がすごい太さ。高さも…、こんなの見たことない」

全長およそ700m。急峻な谷を流れる河内川をまたぐ「河内川橋」。川から路面までの高低差はなんと120mで、ビル30階分に相当します。

NEXCO中日本秦野工事事務所 伊原泰之所長:「静岡県の御殿場に向かって、ずっと(傾斜が)登っているので、谷の地形についてはこれだけ深い形になっている」

Q.両側から造る理由は?
A.「バランスをとりながら、橋を架けていくので、右岸と左岸、両方一緒に伸ばして最後真ん中でつながる」

現在、進捗は5割ほど。大規模な工事だけあって、準備の工程も非常に大掛かりで、ミキサー車など、大型の重機を橋の上部に運ぶために、インクラインと呼ばれる、工事用のエレベーターを設置。重量およそ90トンまで耐えられる巨大な運搬装置です。

堀アナ:「これを人が造ったと思うと信じられない。この上に車が通るってことですよね。これは時間がかかるのも納得できるぐらい目で見て高さを感じる」

この未開通区間の最大の特徴は、ルート上に急こう配の山がそびえ立っているだけでなく、およそ8割が「橋」や「トンネル」などの構造物であるという点。本体の工事だけでなく、工事の足場づくりや資材の運搬など、“工事に着手するための工事”のハードルも高い、難所尽くしの区間なのです。

スマートインターチェンジ建設現場

堀アナ「さらに上に上がって来たが、ここもすごいですよ。ものすごい量の土が盛られている。重機もかなり稼働している」

続いて、やってきたのは、スマートインターチェンジの建設現場。東京ドーム3つ分ほどの広大な敷地で、着々と作業が進められています。

NEXCO中日本 秦野工事事務所 伊原泰之所長
Q.今この作業は何をしている?
A.「トンネル(工事)から出た土を、こちらに盛り土して有効活用している」

こちらは、もともと採石場だった場所です。トンネル工事で発生した土砂を盛り土として活用し、その盛り土の上に、道路を造る計画だといいます。

最先端の技術で

実は、この建設現場では、ある“最先端の技術”が用いられています。

NEXCO中日本秦野工事事務所 伊原泰之所長
「白い部分が道路になります。この山北スマートインターにつきましては、東京方面のハーフインターチェンジ(上りのみ)ということで、こちらが部分合流するところ。ここは中央分離帯ですね」

タブレットのカメラで建設地を映すと、完成予想図が3次元で表示されます。ほかにも、ドローンを駆使して測量や設計を行うなど、ハイテク技術を用いて複雑な作業を効率化しています。

“最難関” 建設現場『高松トンネル』

そして、最後に向かった場所は…。

堀アナ:「トンネルの中に入ってきました」

「“最難関” 建設現場 高松トンネル」

全長およそ3kmの「高松トンネル」。現在、上下線とも、半分ほどまで掘り進められています。

堀アナ:「このトンネルは今最も工事が難航しているという場所。側面を見ると、太いパイプやいくつものコードが束ねられています。トンネルを固定するためのボルトもたくさんついています。あちらでは、今まさにトンネルが掘り進められています」

工事が難航している理由は、ぜい弱な地質にあります。今掘り進めているのは、脆いうえに水を含み粘土化した土砂。掘削と同時に大量の湧水が漏れ出し、崩落が発生することもあり、去年、一時、掘削を中断する事態となりました。

NEXCO中日本 秦野工事事務所 伊原泰之所長
「(土砂を)持ってみます?」
堀アナ:「けっこう軽い」

伊原さん:「これが水を含んでしまうとこういう状態」
堀アナ:「粘り気があって粘土のような感じ」
伊原さん「ですから、トンネルは(地質が)硬いほうがいいものですから…」

有識者による助言のもと熟慮を重ね、現在は、31本の「鋼管」で崩落を防止しながら、水抜きボーリングや地質調査も実施。1日に4~5m程度の速度で、順調に堀り進められています。

NEXCO中日本秦野工事事務所 伊原泰之所長:「やわらかい地層なので、トンネルを掘るスピードがなかなか芳しくない。私どもとしては安全最優先で慎重に掘削を進めていきたい」

2027年度の全線開通を目指し、工事が進められている新東名高速道路。静岡県内を通る東名高速道路、中部横断道、三遠南信道路とともに、さらなる高速道路ネットワークの拡大に期待が膨らみます。

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