連載コラム【MLBマニアへの道】第15回:山本由伸に求められるのはサイ・ヤング賞とリング 投手史上最高額でドジャースと合意

写真:ドジャースと12年契約に合意した山本由伸 ©Getty Images

日本時間12月22日、FA市場で最も注目を集めていた投手、山本由伸がドジャースと契約合意したと複数の米メディアが報じた。現時点で判明している契約内容は12年総額3億2500万ドル(1ドル142円で約461億5000万円)。これまで投手の最高額は2019年にゲリット・コールがヤンキースと契約した9年3億2400万ドルだったが、山本はこれを100万ドル上回り投手史上最高額となる。また、12年という年数も投手としては史上最長だ。

昨今は野手であれば3億ドルの契約も珍しくなくなってきたが、投手で3億ドルを超えたのはこれまでコールだけだった。そもそも、2億ドルを超えた投手がコール含め6人しかいなかったのだ。

ゲリット・コール       9年3億2400万ドル
スティーブン・ストラスバーグ 7年2億4500万ドル
デビッド・プライス      7年2億1700万ドル
クレイトン・カーショウ    7年2億1500万ドル
マックス・シャーザー     7年2億1000万ドル
ザック・グレインキー     6年2億650万ドル

名前を見てわかる通り、2億ドル投手はそうそうたる面々だ。プライス、カーショウ、シャーザー、グレインキーは契約以前にサイ・ヤング賞の受賞経験があり、コールとストラスバーグもサイ・ヤング賞投票3位以内に入った経験があった。また、ストラスバーグは残念ながら故障により契約途中に引退との報道もあったが、コールは今季念願の初受賞を果たしている。

それだけの実績とポテンシャルを証明して初めて到達できる2億ドルという壁を、山本は突破したばかりが史上最高額を樹立した。『SNY』のアンディ・マルティーノ記者によれば、メッツはドジャースと同額の3億2500万ドル、ヤンキースは3億ドルのオファーをそれぞれ出していたという。複数の名門球団が、メジャーでの実績がまだない山本にそれだけの価値を見出したのだ。

これはNPB出身の選手たちがこれまで築き上げてきた実績の賜物でもある。直近でも素晴らしい活躍を見せた千賀滉大の影響も大きかったかもしれない。そこにNPBでも例を見ない3年連続の投手四冠という実績や25歳という若さなど、様々な要素が噛み合ったことで今回の契約にたどり着いたのだろう。

これほどの巨額契約を得た山本は、当然求められるものも大きくなる。レギュラーシーズンではサイ・ヤング賞級の活躍、そしてポストシーズンではチームをワールドシリーズ制覇へと導く支配的な投球を見せる必要がある。

今オフ大谷翔平を10年7億ドルで獲得したドジャースは、そこからこれまでとは少し違った動きを見せている。若手選手を放出し、エース級のポテンシャルを持つタイラー・グラスノウを獲得するなど、まさに”オールイン”と言うべき積極性だ。山本獲得はその集大成だと思われるが、今のドジャースならここからさらにトレードなどで一段踏み込んだ補強を見せてもおかしくない。それほどまでに徹底した戦略を見せており、絶対にチャンピオンリングをとるのだという強い意志を感じる。来年の10月頃には、ポストシーズンで大谷が打ち、山本が抑える試合を見られる可能性は高そうだ。

それにしてもメジャーで選手史上最高額と投手史上最高額がともに日本人選手になるとは。すごい時代になったものである。

文=Felix

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