「息子にラリー界を引っ張ってもらいたい」 現役ラリードライバー勝田範彦の期待と不安 複雑な心境を語る

勝田貴元選手

日本人唯一の世界ラリー選手権のドライバーである勝田貴元選手。11月16日から4日間、愛知・岐阜で開催された「ラリージャパン2023」ではクラッシュによって31位まで順位を落としたが、その後は怒涛の追い上げを見せて見事5位でフィニッシュした。

そんな勝田貴元選手の父親は、全日本ラリー選手権を舞台に活躍する現役のラリードライバー・勝田範彦さん。世界で活躍する息子の姿は、父の目にどう映るのか。ラリーの魅力や楽しみ方も交えながら、息子について語ってもらった。

WRCドライバー・勝田貴元はモータースポーツ界の期待の星

――WRC(世界ラリー選手権)といえば、息子の貴元さんが活躍されていますが、父親として活躍をどう思いますか?

実際に走っている場面を見ると、怖いですね。WRCのトップクラスは、ドライビングが神がかっているんですよ。 なんでこのペースで完走できるんだろうとか、事故にならないんだろう、とか。もちろん危険と隣り合わせなことはあります。心配もあって、期待もあって、複雑な気分です。一番は貴元にラリー界、そして“モータースポーツ界”を引っ張っていってほしいですね。

――貴元さんの活躍に勝田さん自身も刺激を受ける部分はありますか?

刺激は受けます。まだまだ自分の走りは甘いなと感じますね。

ラリードライバー・勝田範彦さん

――2023年は勝田さん自身もドライバーとして活躍されていました。振り返ってみてどうですか?

なかなか大変な1年でしたね。今年はラリーカーもガラッと変わりました。左ハンドルに一番苦戦しましたね。今はだいぶ慣れましたけど、まだ違和感があって。食事はなんでも左手でやるようにしているんですけど、やはり左手で文字ってうまく書けないですよ。そこまでできるようにならないと。

舞台は新城から蒲郡へ! 「来年は苦労せずにいける」

ラリーカムイで走る勝田さん

――来季の「全日本ラリー選手権」は新城から蒲郡に舞台を移します。開催地を変更することで、ドライバーにはどのような影響がありますか?

どこのラリーもそうですが、初めて開催するフィールドは難しいコースが多いんです。路面状況でコケが多いところがある。年々走るごとに道がきれいになって、タイヤのグリップも上がって、路面をとらえやすくなるんです。悪条件の路面を走ったラリーカーはそれだけ汚れが溜まるんですよね。すごく難しいラリーになるだろうなと思います。

――来季への意気込みを教えてください。

2023年前半、苦労した部分があったんですけど、後半はチームの努力です。現在のラリーカーは、しっかりと実力を出せる状態です。なので、2024年は最初から苦労せずいけるような気がします。

初心者必見! 全日本チャンピオンが教えるラリーの楽しみ方

サービスパーク

――ラリー初心者に向けて、ラリーの良さや楽しみ方を教えてください。

選手と近いのがラリーの大きな特徴です。ラリーカーの整備を行う「サービスパーク」があるんですけど、通常のサービスパークはスタート地点と同じ場所にあるんです。スタートとゴールが一緒で、そこに行けばいろんな車も見られるし、ラリー選手の表情を近くで見られます。サインをお願いすれば書いてくれる距離です。

まずはスペシャルステージ(SS)をいきなり見るのではなく、サービスパークを見に行ってもらうのが良いです。そうすれば、SSも見てみたいなという気持ちになると思います。また、全日本ラリーは広範囲ではありません。車がSSを走って戻ってきたときに、さっきあそこのスタート前にいたな、とか、 もう移動して違う場所にいたとか。「次はどこを見よう」と作戦を立てられるんですよ。サービスパークを見たあと、リエゾンで見て、SSに行って、そういうのが楽しいんですよね。まずはサービスパークを見てみてください!

・サービスパーク=各SSの前にチームが車両を整備する場所
・リエゾン=競技区間であるSSとSSの間を公道を使って移動する区間

■勝田範彦
1968年生まれ、愛知県出身のラリードライバー。WRC参戦中の勝田貴元は長男。1993年に全日本ラリー選手権にフル参戦。2007年に年間6勝を挙げて初の全日本チャンピオンに。以後、2008年、2010年から4連覇、2016年と2017年を連覇と計8回のタイトル獲得。2021年には長年所属したスバルを離れ、TOYOTA GAZOO Racingに移籍。JN1クラスに初参戦のGR YARIS GR4 Rallyで挑み、シーズン後半で4連勝と追い上げて自身9度目のタイトルを決めた。テレビ愛知の番組「激走!ラリーTV」では、毎回ゲストとしてラリーの魅力を発信している。

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