「聞く力」ならぬ「若手に丸投げ」では? 全国の地方組織で広がる首相指示への戸惑い

自民党本部=東京都千代田区

 自民党安倍派(清和政策研究会)を中心とした政治資金パーティーを巡る裏金疑惑を巡り、党総裁の岸田文雄首相が党青年局に対し、若い世代や地方の意見の集約と報告を求めたことに都道府県連など全国の地方組織に戸惑いが広がっている。厳しい意見が出るのは必至な上に公開の基準などがあやふやなためだ。

 調査結果の国民への情報提供を拒めば批判を浴び「不信増幅の火中の栗」(自民幹部)となりかねない。国民の声を「聞く力」を打ち出す首相だが「党の若手に手法などを丸投げ」(同)した上に、「実行力」について具体策を示せない状態が続いている。

 「自民党の全国組織である青年局、その地方組織の意見をしっかりと聞いて自分に報告してほしい」。党関係者によると、岸田首相は21日、官邸に党青年局の中曽根康隆局長代理らを呼び指示した。「国民の声に今ほど謙虚に耳を傾けなければならない時はない」と付言したとされる。

 青年局は地方を含む議員ら全国の45歳以下の自民党員で組織されている。中曽根氏は指示を受け「再発防止、国民の信頼回復にリーダーシップを発揮してほしい」と首相に要請。記者団から、家宅捜索を受けた二階派所属であることとの整合性を問われた中曽根氏は「今は捜査に協力し事態解明と信頼回復に努めるフェーズ」などと回答したという。

 党内からは「曖昧な指示でハレーションは必至。若手が気の毒。意見集約を命じるのは総裁の勝手だが、情報の出し方次第で火の玉ならぬ火だるまだ」(閣僚経験者)と皮肉が聞かれる。「耳をふさぎたくなるような厳しい声も入る」(中曽根氏)と首相に覚悟を促した青年局自体も世論の矢面に立つ可能性が高い。

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