理化学研究所生命機能科学研究センター(神戸市)などの共同研究チームは22日、新型コロナウイルスが感染から回復後も心臓内に長期間とどまり、心機能の低下や心不全を引き起こす可能性があることを世界で初めて突き止めたと発表した。心臓に持続的に感染する患者の割合はごくわずかとみられるが、「コロナの患者数の多さからすると、心疾患のある患者を中心にリスクを抱える人はかなり存在するはず」と警鐘を鳴らす。
さまざまなウイルスが心臓に持続的に感染すると、心機能低下につながることが指摘されており、チームはコロナウイルスも同様の働きをする可能性が高いと想定。ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った心臓マイクロ組織を使って検証した。
心臓マイクロ組織にコロナウイルスを感染させ、経過を観察。低いウイルス濃度でも持続的に感染した組織では、4週間後も感染直後と同等の増殖能力があり、回復後も心臓内にとどまることが判明した。
また、ウイルスが持続的に感染した組織と、感染のない組織のそれぞれに心筋梗塞や狭心症に相当する低酸素状態のストレスを与えると、感染した組織は心機能が回復せず、心不全状態に陥った。ウイルスが再活性化して血管網を損傷し、機能を低下させた可能性があるという。
同センターの升本英利研究員は「今のところ対策はないが、持続的な感染状況を調べる有効な検査法や、製薬にもつながるよう研究を進めたい」としている。 (勝浦美香)