駐日パレスチナ大使に聞く 「停戦に向けたプレッシャーを」と日本に期待 戦闘いつまで?【大石が聞く】

2023年10月7日、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃が行われて以降、その報復として、市民を巻き込んだパレスチナ ガザ地区への無差別攻撃が続いています。

これまでの死者は、ガザ地区で少なくとも2万人…その7割は「女性」や「子ども」と言われています。
終わる糸口も見えない戦争。

【名古屋・中区 12月10日 午後6時ごろ】
この状況に抗議の声を上げる人々が、日本にもいます…

(大石邦彦アンカーマン)
「名古屋・栄の光の広場に来ています。ご覧のように、イスラエルのガザ侵攻と無差別空爆に反対するデモが、もうまもなく行われようとしています」

名古屋の栄では、毎週日曜日の午後6時から、反戦デモが行われています。
この日も、200人近くの人が集まっていました。

名古屋在住のパキスタン人「声を上げて、意志を見せるのが大事」

(大石アンカーマン)
「この横断幕を手にした皆さんが、栄の街を練り歩きます。先頭にいるのはこの2人です。少年が『フリーフリーパレスティン、フリーフリーガザ』、“ガザに自由を”“ パレスチナに自由を”と声高らかに叫んでいます」

参加者の中心は、東海地方に住むアラブ系の人たち。

(大石アンカーマン)
「どちらの国の方ですか?」

(デモ参加者)
「両親はパキスタン人なんですけど、育ちは24年間、名古屋です。ここが地元ですね。ガザの市民の人たちが虐殺されているのを見て、いてもたってもいられなくなった。自分たち市民が声を上げて、意志を見せるのが大事だと思う」

(デモ参加者 インドネシアと日本のハーフ)
「(自分は)イスラム教で、同じ宗教なんで人ごとじゃない」

マイクを持つのはパレスチナ人の少女…「日本人にわかってもらいたい」

(デモ参加者)
「(声を出して先導しているのは)パレスチナ人の子ですよ。小学6年生。マイクを持ちたいって」

パレスチナの東隣ヨルダンで生まれ育ったドゥハさん。4年前に来日しました。

(名古屋在住のパレスチナ人 カレドドゥハ・アブナセールさん)
「日本人はパレスチナ問題のことを知らない人がいっぱいいるから、声を出して日本人にパレスチナのことをわかってもらいたい。パレスチナとイスラエルはお互い仲良くなった方がいいと思います」

平和を求めるイスラムの市民の声、ここ名古屋で響き渡ります。

一方、イスラエル人は…「平和的なガザの返還を考えている人もいたが」

一方、イスラエル人はどう考えているのか。
以前、コロナ禍のワクチン接種について取材した、名古屋在住のダニエルさんはこう話します。

(大石アンカーマン)
「率直にイスラエルの人としてどう見ていますか?」

(名古屋在住のイスラエル人 シャハー・ダニエルさん)
「ハマスの10月7日のイスラエルへの攻撃で戦争が始まった。イスラエル人として、関係ない人が(犠牲になる)ということは望んでいない」

長く対立が続く中、共存の考えも高まりつつありましたが、10月7日に戦争が始まってからは、イスラエル人の考え方が大きく変わりつつあるといいます。

(名古屋在住のイスラエル人 シャハー・ダニエルさん)
「10月7日までは、イスラエルは平和が欲しかった。イスラエルの中でも半分ぐらいの人は、平和的にガザを返還しようと考えている人もいた。(10月以来)そう考える人が減ったと思う」

(名古屋在住のイスラエル人 シャハー・ダニエルさん)
「100まで振り切ったものは0には戻れないから、最後まで(侵攻を)やりきらないとって、今イスラエルの人ならそう思うからね」

100年以上、この地を巡って続いてきた、パレスチナとイスラエルの争い。
その溝は深まっています。

イスラエルのネタニヤフ首相は、12月13日、国連の即時停戦を求める決議に反発。
「国際的な圧力には屈しない」と、ハマスの殲滅を掲げ、戦争継続を明言しています。

駐日パレスチナ大使 日本への期待は「停戦に向けたプレッシャー」

【CBCテレビ 名古屋・中区 12月15日】
こうした中で、この問題について知ってほしいと、私たちの取材に応じたのが、
駐日パレスチナ常駐総代表部大使の、ワリード・アリ・シアムさん。

地上波のインタビューに応じるのは、戦争が始まって以降「初めて」です。

(駐日パレスチナ常駐総代表部大使 ワリード・アリ・シアムさん)
「ガザは名古屋市と同じ大きさで、人口もほぼ同じ。想像してください。名古屋市の60%が完全に破壊されることを。190万人の名古屋市民がどこかに連れていかれることを。それがガザで起きている事です。ガザは世界で最も人道的にひどいことが起きている地域です」

大使は、10月7日以降の戦争のことだけを伝えるメディアにも問題があると話します。

(駐日パレスチナ常駐総代表部大使 ワリード・アリ・シアムさん)
「残念ながらメディアは、10月7日以降の話を取り上げています。実際には50年以上にわたるパレスチナのイスラエルに対する抵抗の歴史があります。パレスチナが攻撃すると、イスラエルも攻撃、その繰り返し。パレスチナ人はこの75年間、イスラエル軍による占領下にある。(今回の紛争を)解決するためにも、イスラエルは占領統治をやめるべきです」

(大石アンカーマン)
「日本には、どういう役割を期待しますか?」

(駐日パレスチナ常駐総代表部大使 ワリード・アリ・シアムさん)
「日本はもっと積極的になるべきだと考えます。前へ前へ、他の国連加盟国に、停戦に向けたプレッシャーをかけてほしい。日本は国連の決議や国際法を尊重しているからです」

「各国リーダーが人間性を取り戻し、決断すれば…戦争は1時間で終わる」

そして、戦争終結の可能性について、最後にこう話しました。

(駐日パレスチナ常駐総代表部大使 ワリード・アリ・シアムさん)
「不可能なことは何もありません。全ての可能性はあります。もし、各国のリーダーが人間性を取り戻し、(利害の)ダブルスタンダートにとらわれなければ、決断すれば、1時間で(戦争は)終結するでしょう」

世界で「最も解決の難しい紛争」とも言われるパレスチナ問題。
この戦争は果たして終わるのか…利害を超越した、各国の外交努力が求められています。

2023年12月21日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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