放置の柿をリキュールに 富山県砺波市の若鶴酒造、クマ被害軽減も期待

収穫されずに木に残された柿の実を漬け込んだウイスキーベースのリキュール「KAKISKY」

 若鶴酒造(富山県砺波市三郎丸)が、収穫されずに木に残された柿の実を漬け込んだウイスキーベースのリキュールを10月から販売している。実の有効利用に加え、山から下りてきたクマの餌となることも防げるとし、同社は「クマの被害軽減につながれば」と期待する。

 リキュールに使われているのは、南砺市の山あいで生産される「三社柿(さんじゃがき)」。実が大きくて渋みが強いが、収穫後に皮をむいて乾燥させると、しっかりした歯応えと甘みのある干し柿になる。贈答用として人気だ。

 富山干柿出荷組合連合会によると、現在約140軒の農家で年約400万個の柿を生産しているが、干し柿に加工できる量が決まっているため約10%が木に残されたり、処分されたりしていた。

 同社は新商品の開発を模索する中、生産者との意見交換で大量の柿が廃棄されていることを知り、2020年から収穫されなかった柿を使ったリキュールづくりを始めた。

 「柿を使ったリキュールは前例がなく、配合に苦労した」と製造担当の村井俊之さん(50)。原料となるグラニュー糖の量の微調整を重ね、蒸留所を訪れた客にも意見を聞くなどして、約3年で販売にこぎつけた。

 商品名は「KAKISKY(カキスキー)」で、柿の甘さを感じることができ、若い女性のほか、ウイスキーの一大消費地・台湾から訪れた観光客にも好評だ。企画マーケティング課の篠田凪沙さん(27)は「寒くなるこれからは、お湯割りで楽しむのがおすすめ」と語る。

 現在は直営店だけで販売しているが、24年からウェブでも取り扱う予定だ。1本、300ミリリットルで1045円。

 県内では23年、ドングリ不作の影響で、柿などを求めて人里に出てきたクマの目撃件数が急増。渋柿でも食べるとされ、県は対策として実を取り除くか、木を伐採するよう住民に求めている。

 稲垣貴彦社長(36)は「製造を通じて柿の有効利用とクマ対策、二つの社会課題に取り組みたい」と意気込んだ。

© 株式会社北日本新聞社