「牛舎みたいな臭い」「何様なん?」 熊谷の市立保育所、保育士らが園児19人に「虐待」 所長は暴力も

熊谷市役所=埼玉県熊谷市宮町

 埼玉県熊谷市立吉見保育所(園児59人)で不適切保育や心理的虐待が行われていた問題で、市は22日、所長と主任保育士のほか、職員4人が0~6歳の園児19人に心理的虐待を行い、所長は夏ごろには女児(2)の内ももを強くたたくという暴力もあったことを明らかにした。

 市によると、心理的虐待は2022年ごろから開始。「あのばか頭だから。あのお父さんだし」「いい加減にしなさい!◯◯はいじられる人生なんだからしょうがない」「家でろくなもの食べてない」「牛舎みたいな臭い」「何なん、何様なん?」などの15件の発言を確認した。

 緊急対策で全園児の日々の様子や変化などを専門家に確認してもらい、保健師や臨床心理士などの専門家と相談しながら必要なケアを実施。体制が整うまで、市保育課職員や他の公立保育所の応援保育士を同保育所に配置する。

 再発防止に向けた対策として、見守りカメラや虐待防止委員会を設置。保護者との交流機会も増やし、職員は研修の強化や見直しを行い、適切な保育に対する意識の定着を図る。他の保育所の保育状況についても全公立保育所の保育士からヒアリングを行う。

 市は21日に保護者説明会を開催。調査結果などを説明したが、調査は継続する。保育業務から外れた所長と主任保育士は来年1月1日付で同課付に異動後、厳正に対処され、新たな所長と主任保育士を配置する。

 昨年には保育士から「所長の指導が厳しい」という訴えがあったことも判明したが、同課の新藤守治課長は「風通しの悪い職場で、保育士が何も言えない状況だった」と語った。

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