飛距離を伸ばす要素とは何でしょうか。まず思いつくのは、ヘッドスピードやボールのスピン量といった数値でしょう。しかし、こうした数値だけでは測れないボールに加わる圧力も存在します。同じヘッドスピードでも、この圧力を与えられる人と、そうでない人では明らかに飛距離が違うのです。サイエンスフィットの分析では、このような圧力を使って飛ばせる人に共通する体の使い方が明らかになってきました。
今回の受講者は…
「半年前にレッスンを受けてからチーピンやプッシュアウトといったミスが減り、ショットの安定感がかなり増して、アンダーパーでラウンドできるようになってきました。ただ、競技ゴルフのように総距離が長いコースでは、長いセカンドショットが残ることが多く、まだまだキツイですね。もっと飛距離を出すために今のスイングをどう変えていけば良いのか、分析して欲しいです」(岡山さん ゴルフ歴14年、ハンディキャップ2)
スイング分析で飛距離が出ない要因を解明
安定してアンダーパーが出ているということで、前回からの数カ月間で、かなりレベルアップしていることがうかがえます。もう何も言うことがないほどのレベルですが、ご自身でも不満がある通り、飛距離に関してはまだ改善の余地が十分にあります。ヘッドスピードは44m/s前後で、飛距離は240yd程度ですが、このヘッドスピードに対して最大限の飛距離はその約6倍であることを考えると、260yd前後は飛ばせるはずです。
まずは、スイング全体の成績表を見てみましょう。アンダーパーが出せる実力だけあって、ダイヤの面積がとても広く、ヘッド挙動、シャフト挙動、動作解析ともに欠点の少ない、プロのようなデータです。つかまり指数は、前回のレッスンを磨いていけば上がっていくでしょう。今のヘッドスピードに対して最大限の飛距離が出ていないという問題は、もう少しモーションキャプチャーのデータを深堀りしないと見えてきません。
岡山さんの体の動作推移グラフは、ほぼすべての部位でプロのような軌跡を描いています。ただし、上半身と下半身の捻転差に関しては、プロと比較して、切り返しからインパクトにかけてその差が少ないスイングであることが分かります。実はこの捻転差こそがヘッドスピードだけでは測れない飛距離の本質です。同じヘッドスピードでも、この捻転差があるほどボールに与える圧力が上がり、大きな飛距離につながってきます。飛ばし屋と言われる人で、この捻転差が少ないケースはありません。
壁を使って捻転差を生むスイングを体感
上半身と下半身の捻転差が少ないからといって、下半身をグイグイ先行させようとすると、スイングがバラバラになって、その途端に球がつかまらなくなるのは確実です。実際に捻転差を作るポイントは想像するような大胆な動きではなく、切り返しのタイミングで「左の腰をアドレスの位置に戻す」という、とても小さな動きだからです。ですから、初級、中級者の方でしたら、あまりそこにフォーカスせず、まずは今のスイング軌道を整えて安定させることに注力し、飛距離を生む捻転差は次のステップだと考えたほうが良いかも知れません。
捻転差を生むための動作は、切り返しのタイミングで左のお尻をアドレスの位置に戻すことに尽きます。それを体感するいちばん良い方法は、壁にお尻をつけてシャドースイングすることです。テークバックで壁から離れた左のお尻を、切り返しでアドレスの位置に戻すだけ。やみくもにどんどん下半身を先行させるのではなく、切り返し時に、下半身がわずかに先行する感じです。
これだけで岡山さんの打球音は厚みのある音に変化し、飛距離もアップしてきました。下半身が先行するぶん球のつかまりが悪くなるので、それに応じてダウンスイングでの左腕の外旋量(ねじり戻す量)を調整していくという流れになります。今回は、上級者向けの内容なので今すぐに深追いはせず、捻転差が自分の出せる最大飛距離のベースになることを知っておき、ショットが安定した後のステップアップとして取り組んでみてください。
それでは、今回のレッスンを動画でご覧ください。