長崎に移住した漁師の平田さん(50) 地元秘伝の干物、ブランドイワガキ…全国展開へ情熱

潮風を浴びながら、サバを干す平田さん=長崎市深堀町6丁目

 青空の下、長崎県長崎市深堀地区の海をバックに、脂が乗ったサバの開きが並ぶ。潮風と日光を浴びながら干物を作るのは、長崎みなと水産平田屋代表、平田浩太郎さん(50)=同市深堀町5丁目=。自ら命名したブランドイワガキ「夏盛(なつざかり)」の養殖にも力を入れ、「深堀の干物作りを継承したり、夏盛を全国に広めたりして、深堀地区を盛り上げていきたい」と熱く語る。
 福岡県直方市出身。2016年、長年勤めた長距離運転手から漁業に転身し、長崎市みなと漁協深堀支所で3年間研修を積んだ。
 以前は大勢の干物生産者がいたという深堀地区。しかし、現在は5軒ほどしかいない。平田さんは17年、近くに住む峰京子さん(77)を手伝ったことをきっかけに干物を作り始めた。「世代交代で、深堀の干物をつないでくれている」。期待のまなざしを向ける峰さんを師匠と仰ぎ、独り立ちしてからも、岸壁で二人並んで作業を続ける。
 干物作りの期間は、北風が吹き出す11~3月。同漁協が取り寄せたノルウェー産のサバを開いた後、秘伝のタレに漬け込み、潮風と天日に5~6時間さらして水分を飛ばした後、袋に密封する。ふっくらとした身と豊かな風味が評判となり、年末に向かうこの時期、注文の予約はいつも埋まっている状態だ。
 4~10月にかけては、夏が旬のイワガキ生産に充てている。約3年間かけて育てるイワガキは、濃厚でクリーミーな味わいが特徴で、22年にブランド化。今後、全国展開に向けてネット販売にも力を入れようと構想する。
 生産の中心はイワガキと干物だが、平田さんの肩書は漁師。船で漁に出たり、素潜りをしたりもする。ほかにも、同支所で購入した活魚を刺し身にして直売所などで販売。「一昨年か去年ごろまで、近所の人は自分のことを魚屋さんと思っているようだった」と笑う。約3年前には「長崎市みなと青壮年部会深堀」を仲間と共に発足させ、カキ焼きイベントを開くなど地域活性化へ情熱を注ぐ。
 「ああしてみたい、こうしてみたいと口に出すと舞い込んでくる」。移住を機に夢を語るようになったという平田さん。深堀地区の一員として、自らの仕事や活動で新規漁業者の就業につなげ「担い手となる若者を増やしたい」と奔走している。

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