TGR WRCチャレンジプログラム3期生が決定。講師のヒルボネン「すぐに良いレベルに到達できる」

 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は10月22日、WRC世界ラリー選手権で活躍できる日本人ドライバーの発掘・育成を目指すTGR WRCチャレンジプログラムの3期生として後藤正太郎と松下拓未の2名を選出したと発表した。

 ふたりは2024年1月よりさっそく同プログラムに参加し、夏以降に前輪駆動のラリー4マシンで、フィンランドや欧州地域の国内ラリーへ参戦することを目標にトレーニングを開始する予定だ。

 TGR WRCチャレンジプログラム(旧TGRラリーチャレンジプログラム)は、日本からWRCのトップレベルで活躍できる可能性を秘めた才能ある若手ドライバーを発掘し、育成するために2015年にスタートした育成プログラム。2024年はTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチームの“レギュラードライバー”として世界選手権を戦う勝田貴元も、同プログラム出身だ。

 3期生の選考は、2023年9月に静岡県の富士スピードウェイで実施した1次選考、2次選考から開始された。フィンランドからミッコ・ヒルボネンらプログラムの講師陣が来日し、約70名の応募者から6名が選出され、フィンランドで行われた最終選考へ移行した。

 その最終選考はフィンランド北部のラップランドで実施され、フィジカルテストから始まり、続く5日間のドライビングテストではさまざまな車両を使用しながら、候補者のスキルとポテンシャルを測った。候補者たちは、雪上および氷上での運転経験がほとんどない状態であったが、そのなかでもトップレベルのドライバーになれる可能性が最も高いと講師陣が判断し、最終的に選ばれたのが後藤と松下の2名だった。

 ラリードライバーとしては初心者であるふたりは、2024年1月よりさっそくプログラムに参加する。冬の間は走行やペースノートの実践、フィットネスなど包括的なトレーニングを行い、春以降は拠点をフィンランドに移し、実戦に向けてフルタイムでのトレーニングに移行する予定だ。

 元WRCのスタードライバーで、同プログラムのチーフインストラクターを務めるヒルボネンは、今回選出したふたりのアジャスト能力を高く評価した。

「後藤は大学の自動車部で、実際の運転は約2年の経験しかないとのことだったが、我々のアドバイスに従ってドライビングをアジャストする能力が素晴らしく、今回のテストの間だけでもかなりの成長を見せた」

「松下は、ラリーはこれまで1度出たことがあるだけということだが、メカニカルな部分の理解が非常に深く、異なる駆動方式の車両もすべてすぐに良いレベルで乗りこなしてみせた」

「これからプログラムが始まり、とくにラリーで重要なペースノートのトレーニングが大変になるだろうが、すぐに良いレベルに到達できると確信している」

 今後ヒルボネンほかTGR WRCチャレンジプログラム講師陣の下で成長していく3期生の最初の目標は、来年夏以降に前輪駆動のラリー4マシンを使用してフィンランドや欧州の国内ラリーに参戦することとなる。

 なお、TGR WRCチャレンジプログラムの先輩である1期生の勝田をはじめ、2期生の小暮ひかると山本雄紀はラリー2マシンで2024年を戦うことが決まっており、銘々が確かな成長を積み重ねている。新たにプログラムに加入し、先達の背中を追ってトップドライバーへの成長を目指すふたりの挑戦に注目だ。

2期生の山本雄紀がドライブするルノー・クリオ・ラリー4/RC4クラス 2023年WRC第9戦フィンランド

■プログラム3期生コメント

●後藤正太郎

「このプログラムに参加できることになりとても幸せです。初めてのラリーカーでしたし、自分はほかのドライバーより学びが遅いように感じるなど、精神的にもタフな1週間だったので、選ばれたときは本当に嬉しかったです」

「自分のモチベーションはつねに、より良いドライバーになり続けるということだったので、素晴らしい環境でそれを実現できる機会を与えていただき、これからがとても楽しみです。自分のように小さい時からモータースポーツをしてこなかった人にもモータースポーツの世界に入るチャンスを与えてもらえる、人生を変えてくれるプログラムだと思っています」

●松下拓未

「チャレンジプログラムのドライバーに選ばれることができてとても嬉しく、ホッとしています。メンバーの一員として、TGRの皆さん、先輩である勝田さんや山本さん、小暮さんと一緒に活動ができることがとても楽しみです」

「ラップランド(フィンランド)での走行セッションではたくさんのことを学び、特に大きな学びは左足ブレーキと、ステアリングではなくブレーキとアクセルでクルマをコントロールするということでした。このような大きなチャレンジの機会を与えていただきとても感謝しています。ラリーの経験は少ないので、トレーニングをたくさんして早くラリーに出られるように頑張ります」

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