1970~80年代の「西陣」を写真集に モノクロで活写、路地裏に引かれた思いとは

1970~80年代の西陣地域を情感豊かに切り取った写真集を出版した田口さん(京都市上京区)

 1970~80年代の西陣地域を情感豊かに切り取った写真集を、京都市上京区出身の写真家が出版した。雨にぬれた路地裏や街角で遊ぶ子どもたちがモノクロフィルムで活写され、郷愁を誘う。

 同区の聚楽学区出身の田口郁明(ふみあき)さん(74)=大津市。武蔵野美術大学在学中から西陣を中心に市内を歩き回り、シャッターを切ってきた。趣味で始めたが、昔ながらの町並みが徐々に壊されて景色が変わる中で記録に残したいとの思いが強くなったという。写真の仕事が落ち着いた昨秋から出版に向けて準備してきた。

 写真集「京都西陣と都の風情 1972-1988」には、35ミリカメラで人々の表情や生活感あふれる風景に迫った約160枚が収められている。今宮神社還幸祭でのにぎわいや、北野天満宮近くの御土居跡で遊ぶ子どもたちの写真は、声が聞こえそうなほど臨場感がある。着物姿の女性の多さや六面立体パズル「ルービックキューブ」を売る青年は時代を感じさせる。

 田口さんは「子どもたちがかくれんぼやビー玉遊びをしていた西陣の路地裏に引かれる。子どもからお年寄りまで活気があった」と振り返る。撮影していた80年代後半以降は高層マンションや駐車場が増え、今後は、西陣の現在を撮りたいという。

 B5判変型176ページ。2500円。大垣書店発行。同書店で販売している。

出版した「京都西陣と都の風情 1972-1988」

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