財布からお金が減ると幸せになるしくみがある?寄付が幸福度を大きくアップするワケ

財布からお金が減ると幸せになるしくみがある?

幸せをお金で買う、というとちょっと味気ないイメージがします。とはいえ買い物とは本質的には幸せや満足、豊かさをお金で手に入れる手段です。

基本的には金額のアップは購入できる幸せの量のアップです。高い買い物のほうが普通は高品質につながるからです。

ところが、「自分に何も戻ってこないけど、お金だけは出て行く幸せ」というものがあるとしたらどうでしょう。

あなたの幸せを分析するウェルビーイング研究においては、この「お金だけ出ていくのに幸せを得られる」仕組みは重要だと考えられています。

それは「寄付」です。

寄付はあなたを幸せにしてくれる

あなたがどこかの団体に寄付をしたとき、そのお金はあなた自身には何も残りません。全額がその団体の活動資金となるからです。

寄付をしたお金の分、あなたの手元のお金は減ってしまいます。何かを節約したりガマンすることになります。1000円の寄付は、あなたが買い物するはずの1000円分の物的満足をなくすことです。

しかし、寄付で何も残らないわけではありません。むしろ幸福度に着目すると寄付はあなたを幸せにしてくれることが分かっています。世界的にも幸福度調査の要素として「寄付をしたか」が含まれているほどです。

国内においても、ニッセイ基礎研の調査では自分のものとしてもらうポイントと、寄付に用いられたポイントでは寄付のほうが幸福度が高い結果が出たそうです。

過去に震災被害をきっかけに寄付をしたことがある人は、助け合いの気持ちを持ったと思います。大変な思いをしている人のために少しでも力となりたい、という気持ちです。

寄付をしたことで、そうしたつながりの感情を持ちます。少しだけ余裕がある人がその一部を分けてあげることで得られる気持ちは幸福度としては大きなボリュームとなるのです。

寄付のいいところは「自己決定権」にある!

ところで、寄付のよいところに自分で決めることができる「自己決定権」があります。自己決定権があることも幸福度に大きく左右します。

義務づけられたり強制されていることより、自分で選べることが多い人のほうが幸福度は高まります。

食事のメニューが誰かに強制されているより、2つから選べるほうが幸福度は高まりますし、たくさんのメニューから自由に選べるほうがもっと幸福度は高まります。自分で決められることは快楽であるからです。

寄付のいいところは「どこへ寄付をするのか」つまりどんな取り組みを応援したいと思っているのかを自分で決めることができることです。

日本の科学技術を支えてみたいならJAXAに寄付して人口衛星はやぶさのサポートをすることもできます。

難民の食糧問題に関心がある人はWFP(国連のフードプログラム)に寄付をすればあなたのお金が食糧支援の購入費用となります。

もっとローカルな取り組みに寄付をすることもできます。貧困と闘っているひとり親家庭を支援する活動もありますし、寄付による困窮学生の奨学金支援をする団体もあります。

どこに寄付をするか悩むことは、あなたのお金が誰かを少しでも幸せにすることを具体的に想像することです。それは、あなたのウェルビーイングも高める力となってくれるのです。

第二に、金額を自分で決めることも寄付の自己決定権です。税金や社会保険料は強制的に引かれますが、自分の無理のない範囲で寄付金額は決定することができます。

100円にするのか1000円にするのか、10000円以上出してみるのか、自分の余裕を勘案しながら決めることができこともウェルビーイングの観点では大きなプラスになるのです。

なお、取り組みがしっかりしている団体(認定NPOなど)は寄付金控除の仕組みがあり、寄付金の一分を税金から還付してもらうことが可能です。

寄付をしたら節税になる仕組みなので該当する場合は確定申告をしてみてください。

年末だからこそ、誰かを支える寄付をしてみよう!

さて、寄付のお金を出すチャンスが12月にあります。年末調整の還付金です。

毎月の給与はほぼ使い道が決まっていますし、賞与も多くは使い道があるでしょう。それでも寄付を考えるとき、ちょっとまとまったお金が「ミニボーナス」のように入金される年末調整の還付金です。これを利用してみてほしいのです。

還付金は会社員が毎月源泉徴収で給与から先取りしていた所得税額を精算し、多く取り過ぎていた分を年末(あるいは年始)にまとめて戻すしくみです。実は自分のお金が戻ってきただけなのですが、気持ち的には「ミニボーナス」だと思います。

ここまでの家計は(ちょっと多く引かれた手取りで)なんとかやりくりしてきましたから、還付金を寄付に回したことで生活が苦しくなることはありません。

金額としても数千円から数万円くらいが還付金の水準なので頃合いの良い寄付金額ではないかと思います(還付額は年末調整の条件による)。

12月といえばクリスマスがあり年末年始イベントがありと、自分と家族の幸せについて改めて考える時期でもあります。親しい人へプレゼントを贈ることも多いはずです。

あなたの寄付が誰かの幸せを形作ってくれるかもしれない、そんなことを想像しながら、プレゼントを贈るような気持ちで「寄付」をしてみてはいかがでしょうか。

(ウェルなわたし/ 山崎 俊輔)

© ぴあ朝日ネクストスコープ株式会社