富山に根ざす老舗菓子メーカー・日の出屋製菓 富山の農業に参入 有機JAS認定へ五箇山米プロジェクト参画〈連載7〉

1924年(大正13年)2月26日、富山県福光町新町(現・南砺市福光新町)で川合宣之氏が創業した日の出屋製菓産業は来年、創業100周年を迎える。

創業以来、米菓などの原料に富山米を100%使用し続けるなど富山に根ざすことと、人と自然の絆を結ぶことを経営の軸足とする同社は、持続的な成長に向けて海外展開も視野に富山の農業に肩入れする。

同社では、富山米を100%商品に使用することは、富山の豊かな自然や風景、地域を守ることにつながると考えている。

取材に応じた川合洋平専務は、農林水産省「2020農業センサス」を引き「地元・富山県南砺市(なんとし)を含めて100万強の農家のうち約75%が後継者不足で困られている。当社としては農家の方々と手を携えお米を使った高付加価値商品を日本全国に販売して南砺の風景を守りたい」と語る。

五箇山農業公社の有機栽培実証実験

この想いから同社は五箇山米プロジェクトに参画。同プロジェクトは、五箇山農業公社(南砺市)が南砺市の連携のもと有機JAS認定の取得と中山間地での自立した農業を目指した実証実験で2022年に開始された。

JAS認定まで3年かかるため、22年は有機栽培実証実験「自然農法米」として収穫された。このうち同社は420キロを買い取り製品に仕立て多方面へ販売・発信した。

おこわのお米のおやつ専門店「おこめぢゃや」の1周年企画として全国5店舗で「五箇山自然農法米団子」を販売。五箇山味噌などとコラボした味付けも行った。

ECサイト「ささら屋EC」では、富山米の定期購入者へ頒布会を行い全国にPR。直営店「ささら屋」でも販売した。

看板商品「しろえび紀行」にも採用。五箇山自然農法米使用バージョンを企画し「ささら屋」の一部店舗で販売した。

これらの取り組みは複数のメディアにも取り上げられ、連携の輪も広がり展開初年度の反響は上々となった。

「結いふぁーむ」や近隣農家の野菜売場

今後については「引き続き商品開発と国内外問わず試売を行っていくとともに、同じ志を持った県内の加工業者を探し生産者と販売者のネットワーク・循環を作っていきたい。農業の現状とお米の魅力も発信する。“儲からない”“カッコ悪い”といった農業のネガティブなイメージも払拭し、若者の農業離れに歯止めをかけたい」と述べる。

同プジェクトへの参画に先立ち2010年に開始した自社農場「結いふぁーむ」での農事業にも注力していく。

同社の農事業は、参入要件が緩和された2009年改正農地法施行後、富山県内での農業参入第1号となる。

「結いふぁーむ」では、原料米を精米したときに出る米糠(ぬか)にEM菌を混ぜた「米糠ボカシ肥料」を使い約100アールの耕地で野菜づくりを行っている。

収穫された野菜は直営店などで販売されるほか、米菓の副材料への活用や素材を活かした新ジャンル菓子に加工して販売される。
田植えや芋堀りなどの体験イベントを開き顧客とのコミュニケーションの場としても活用している。

このような富山米をはじめとする富山の産物の展開先としては世界を見据える。

同社は現在、アメリカ、中国、台湾、香港、マカオ、韓国、ベトナム、シンガポール、マレーシア、ドバイとアジアを中心に海外販路を拡大している。

川合声一会長兼社長は「富山のものを加工して世界中に売っていきたい。海外の売上は23年に1億円を突破する勢いで、当面は3億円の売上を目指し新たな販路も開拓していく」と意欲をのぞかせる。(おわり)

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