「減税」を前面に打ち出した「24年度の税制改正大綱」決定、でも曖昧な部分が多すぎ…!? 専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。12月20日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「“減税”を前面に押し出した、来年度の税制改正大綱」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです

◆来年度の税制改正大綱が決定

自民、公明両党は12月14日(木)、来年度の税制改正大綱を決定しました。所得税などの定額減税、賃上げ税制の拡充など「デフレ脱却」のための減税メニューが並んでいます。

吉田:塚越さん、まずは「税制改正大綱」とは何なのか、改めて教えてください。

塚越:翌年度以降の増税や減税といった「税制」についての内容や、検討事項をまとめた文書になります。例年、秋から自民公明の両党がそれぞれの税制調査会で議論して、最終的に12月に与党としてまとめるのが恒例となっています。この文書をもとに税制改正法案を政府が作成し、来年1月の通常国会に提出することになっています。

◆“減税”を前面に打ち出した内容だが…

吉田:その税制改正大綱、来年度は“減税”が前面に打ち出されているのですか?

塚越:そうですね。とにかくたくさんあるので、代表的なものを簡潔にまとめます。先に全体の印象を述べれば「減税」を押し出しつつ、重要な部分は曖昧だなというのが私の印象です。

まず、以前から報道されていた、1人あたり4万円の定額減税(所得税など)については、「年収2,000万円を超える人は外す」という所得制限がつきました。とはいえ、2,000万以上の人は全体の1%程度で、あくまで不公平感を取り除くものになっています。

また、減税は来年の実施だけでなく、再来年以降も柔軟に対応、つまり場合によっては実施するといった内容になっているものの、柔軟というよりも曖昧な表現だなというところがあります。

次に、児童手当を高校生まで拡充することで、高校生などを扶養している場合の扶養控除を縮小する案が出たのですが、大筋で目処はついたものの、正式決定は来年に持ち越されました。正式決定前に、もう一度議論が再燃する可能性もあります。正式決定にならなかった理由は、自民党と公明党で意見が割れたことも一因ですが、これも曖昧だと思います。

一方、賃上げを実施した企業の法人税を減税する「賃上げ税制」は、読売新聞の表現では「アメとムチ」を使い分けるとのことです。大企業の場合、これまで税制優遇となった賃上げ率3%以上~4%未満の企業の控除率は下げて、新たに賃上げ率5%以上、7%以上を新設。賃上げするほど控除率を上げることになりました。多くの大企業ではすでに4%以上の賃上げがおこなわれているので、「さらに賃上げをしなさい」ということだと思います。

一方、中小企業でも、赤字であっても5年以内であれば黒字になるまで減税の優遇措置を繰り越せる制度を導入することになっています。同じく半導体や電気自動車(EV)といった成長分野には「戦略分野国内生産促進税制」を新設しました。「EV 1台あたり40万円」など、生産量に応じて減税することになりました。

ユージ:購入した側が減税対象ではなくて、作る側が減税対象ということでしょうか?

塚越:そうです。製造側が安くなります。逆に、設備投資がおこなわれなければ税制優遇はなくなるので、積極的に開発にお金をかけるということです。要するに、アメとムチなのかなと。

◆「防衛増税」「トリガー条項の凍結解除」については見送り

ユージ:“減税”を前面に押し出す一方で、「防衛増税の開始時期」や「トリガー条項の凍結解除」に関する記載は今回、見送られましたか?

塚越:去年の今頃に発表された税制改正大綱では、防衛増税の開始時期は示しませんでした。今回も先送りなんです。財務省出身の宮沢洋一税制調査会会長は、今年中に開始時期を決定したがりましたが、結局、岸田文雄首相が見送りを決定しました。

増税には政権の体力が必要ですが、現在の自民党の政治状況では厳しい、といった発言をされています。もともとの支持率が低いところに、裏金問題がダメ押しになったという感じです。

私は防衛増税には反対ですが、結局「先送り」が多すぎて、“決定しないままの持ち越しだらけ”というのは、どうなのかなと思います。

ガソリン税の上乗せ部分を停止する「トリガー条項」ですが、こちらは国民から望む声も多かったです。自民、公明、国民民主で引き続き協議するとされましたが、こちらも決定はせず見送りになっています。

ユージ:これもずっと言われていますよね。

塚越:こちらについてはいろいろと言われていたのですが、国民民主党が内閣不信任決議案に賛成したことが問題視されたということです。そもそも国民民主に関係なく、やるならやるべきだと思います。

ユージ:来年度の税制改正大綱、塚越さんは、どうご覧になりましたか?

塚越:先ほども話したように、曖昧なことが多いです。岸田首相はそもそも何をやりたいのか分からないと言われていたのですが、ますますそういうところで分からない点が多いという印象ですね。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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12月20日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年12月28日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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