茨城県警鑑識課 「物証」探し現場奔走 指紋や足跡、目を光らせ

コーヒー缶の指紋を採取する斎藤和彦さん=県警本部

事件現場に残された物証から犯人の手掛かりを探る茨城県警鑑識課員は、「モノ」から事件解決を目指す科学捜査官だ。県内で起きる事件現場を奔走し、犯人の遺留物が残っていないか目を光らせる。指紋や足跡、DNAなど犯人に迫る材料はさまざま。事件解決に向けて照合や分析作業に日夜取り組んでいる。

鑑識活動は、事件現場で指紋や足跡、体液など、犯罪を証明する物証を探す役割を担う。県警鑑識課には、凶悪事件などに集中投入され、県内各警察署からの出動要請にも即応する「機動鑑識班」もある。

指紋の場合は、付着した場所によって粉末や検出薬などを使い分け、足跡なら赤外線を照射。静電気を使って、じゅうたんからも採取が可能だ。近年のDNA検出では人工光の観察技術が高度化し、これまで肉眼で見えなかった痕跡が見えるようになるなど精度が向上しているという。

同じものが二つとない指紋は、個人を特定する重要な証拠。ただ、扉の開閉や物を持ち上げた時の指紋はつぶれたり、こすれたりして変形するため、事件現場に整った指紋が残ることは少ないという。

こうした指紋のゆがみを補正して照合するのが指紋係。担当の猿田敏明さん(47)は「拡大鏡で見る2.5センチ四方の世界が、われわれにとっての犯行現場」と語る。

鑑定技術はデジタル化が進んでいるが、判別するのはあくまでも人の目。猿田さんは「次世代でも問題なく鑑定できる体制を維持しなければ」と人材育成の必要性を語る。

現場に残された資料の中で、迅速な鑑定が必要なのが足跡だ。指紋やDNAと異なり、犯人の靴はすぐに替えられてしまうためだ。

足跡を収めたフィルムを数万足分の靴底データと照合し、すり減り具合などから犯人を絞り込む。担当の江幡聡さん(36)は「ごく一部しか見えない足跡から靴を特定できた時にやりがいを感じる」と話す。

デジタル化や技術革新で照合や分析能力が向上している鑑識活動。鑑識経験30年以上の斎藤和彦さん(59)は、日進月歩の技術について「今後も鑑識は進歩していく」と見据える。その半面、事件現場では足跡の向きや指紋が付いた場所などから、犯人がどのように動いたか見極めることも重要になる。

斎藤さんは「とにかく綿密な現場観察が大切」と強調し、観察眼の重要性を訴える。

両目で同時に指紋を見比べる猿田敏明さん
足跡に光を当てて鑑定する江幡聡さん

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