強烈、ブリザードの洗礼 本紙記者、南極より

命綱をつなぎ、暴風の中を移動する隊員たち=23日午前11時52分、南極・昭和基地

 【昭和基地=報道部・小田信博】南極の昭和基地で23日、ブリザードが発生し一時、建物間の移動を禁止する「外出禁止令」が出された。強烈な風が吹き荒れ、作業は全て中止に。第65次南極観測隊(橋田元(げん)隊長)は、基地到着から3日目にして極地の洗礼を浴びた。

 20~22日は青空が広がり、本県より暖かいほどだった。23日午前に外出を制限する外出注意令が出され、風が強く視界が悪いことから、午後1時15分(日本時間午後7時15分)に禁止令に切り替わった。

 午後1時21分時点の瞬間風速は30.5メートル、暴風は続き、平均24.8メートル。視程は0メートルで、気温は氷点下2.1度。視程や平均風速、継続時間からA~C級に分類され、この時点でA級相当となった。

 昭和基地の夏季宿舎は第一夏宿(一夏(いちなつ))と第二夏宿(二夏(になつ))に分かれる。まだ移動できる時間帯に昼食を取るため、記者が寝泊まりする二夏から一夏へと移動してみた。

 ドアの前に立つと、うなるような風音が響く。勇気を出してドアを開けた途端、猛風に襲われ、何かにつかまらないと吹き飛ばされそうだった。ブリザード中、施設と施設はロープでつながっており、そこに命綱をかけて必死にたどる。顔を上げることができず、呼吸が苦しい。真冬の庄内で体験した地吹雪より強烈で、命の危険すら感じた。

 5分程度の移動だったが、息も絶え絶えの状態だった。平塚丘将(たかまさ)さん(29)=高知工科大大学院工学研究科・博士課程2年、栃木県野木町出身=は「こんな天候になるとは。実際に体感すると恐ろしい」と驚いていた。南極の夏季に禁止令が出るのは珍しいという。地球環境の変化が影響しているかは不明だが、横殴りの暴風に、そう感じずにはいられなかった。

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