高齢者から傾聴、受話器の向こう感じる変化・通じる心 京都・大山崎のボランティア団体

月に1度の会議で1カ月間の活動を振り返り、今後の取り組みを話し合うメンバー(大山崎町円明寺・町福祉センターなごみの郷)

 互いに表情は見えなくても、1本の電話が心をつなぐ。

 「テレフォンボランティアさくら」は週1回、京都府大山崎町内の高齢者宅に電話をかけ、数十分おしゃべりする団体だ。何げない日常の出来事、最近の体調や悩み。話を聞いてくれる人がいることは癒やしになる。

 最初のコールは2002年5月1日だ。独居の高齢者が増える中、つながりづくりや見守り、安否確認のためとして、町社会福祉協議会のボランティア養成講座を受けた町民らによって活動がスタートした。

 それから21年7カ月余り。団塊の世代が後期高齢者となる「2025年」が近づき、ニーズは高まる。ボランティアメンバーは現在6人で、利用者は4人。代表の竹内和史さん(73)は「デイサービスなど誰かと接点を持てていない人はいるはず。利用したいけれど声が届いていないという方に、なんとか声を届けたい」と語る。

 活動は毎週水曜の午前中。ボランティア1人が利用者4人に電話し、話した内容を日誌にまとめる。

 傾聴を通じて得る情報は、最近の暮らしぶりといった内容だけではない。利用者が歌うのを聞いたり、戦争体験など人生に話が及んだりすることもある。さらに、利用者の声の大きさ、電話に出るまでの時間にも気を配って、体調の変化も声から読み取ろうとする。そうした利用者の様子は月1回のボランティア会議で共有し、次の電話につなげている。

 家族やケアマネジャーら近しい人には言わないことをボランティアには話してくれ、支援につなげられたこともあるという。竹内さんと共に代表を務める山本七重さん(66)は「電話だからこそ言えることもある」。電話口で待つ利用者を思い、受話器を手にしている。

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