思い出のクリスマスソング

 きっと来ない君を街角で待ち続けたことはないが、悲しいクリスマスの歌が好きなのは、独りきりで過ごしたイブが多かったからか▲クリスマスソングでは「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」が特に思い出深い。和訳すると「彼らはクリスマスだと知っているだろうか」。主に英国のミュージシャンが結集した「バンド・エイド」が1984年12月に世へ送ったチャリティーソングだ▲カルチャー・クラブ、ポリス、U2、スタイル・カウンシルら当時の英国を代表するバンドが、飢餓や戦争に苦しむアフリカの人々を救おうと立ち上がった。世界中で大ヒットし、14億円以上の募金を集めた▲当時は高校生だった。英国の音楽を夢中で聴いていた。バンド・エイド結成に感動し、自宅近くの小さなショップに駆け込むようにして、すぐレコードを買った。何度も何度も繰り返し聴いた▲「君がクリスマスを楽しんでいても、窓の外には恐怖と不安に満ちた別の世界がある」「彼らにとって一番の贈り物は今年も生きていること」-。ポップなメロディーに乗り流れる歌詞は、今も争いだらけの世界へ真っすぐに届く▲今日はクリスマスイブ。ガザに、ウクライナに、世界の至る所に思いを寄せ、今年も多くの人がこの歌を聴き、口ずさんでいることだろう。(潤)

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