聖夜に映える平和の光 うるま市の「ぬちしぬじガマ」 沖縄戦で一人も命落とさず 話題を呼ぶ電飾で年10万人が来訪 

 沖縄戦時に住民が避難したうるま市石川嘉手苅にある全長200メートル鍾乳洞「ぬちしぬじガマ」は、ライトアップされた“映えスポット”として口コミで広がり、今年は国内外から約10万人が訪れている。戦時中は、ガマとして住民300人が避難し一人も命を落とすことなく助かった場所。鍾乳洞を管理する池原勇矢さん(33)は「歴史と自然、両方を知ってほしい」と話し、クリスマスに平和を考える場所として来場を呼びかけている。(中部報道部・又吉朝香)

 ピンクや青、緑などさまざまな色で照らされる鍾乳石は神秘的で、訪れた観光客はスマホで写真を撮って楽しんでいる。交流サイト(SNS)では「カラフルなライトがきれい」「異世界にいるよう」などと話題になっている。

 鍾乳洞をライトアップしたのは5年前。先祖代々引き継いできた土地で事業を広げたいとの思いから、鍾乳洞の自然の魅力と平和を感じる場所「CAVE OKINAWA(ケイブ オキナワ)」として、照明設置や足場を整備した。案内板には戦時中の出来事が記されている。

 それまでは県外の修学旅行生の受け入れがメインで年間客数は3千~4千人ほどだったが、整備後はパワースポットとして注目されるようになった。

 鍾乳洞には沖縄戦の時に300人の住民が避難し、一人も命を落とすことなく助かった。「命をしのいだ」という意味で「ぬちしぬじガマ」と呼ばれている。

 池原さんの曽祖父の故・山城政賢さん(享年76)は戦時中、ここの集落の区長で、米軍に見つかった時には山城さんが交渉し、住民全員が生き延びた経緯がある。山城さんは戦後「命どぅ宝。命こそが大切だ」と子どもたちに繰り返し伝えていたという。

 香港から家族4人で訪れたナタリエ・ソウさん(18)は「観光サイトで知り写真を撮りたくて訪れた。美しいだけでなく、沖縄戦の歴史を学べる貴重な場所だ」と話した。

 鍾乳洞は来年から照明をリニューアルし、飲食店や体験施設の開業、駐車場も拡張して「観光施設化」を目指す。池原さんは「ガマといえば戦争のイメージだが、美しい鍾乳洞の自然の魅力もある。先祖が守ってきた土地の魅力をさらに高めたい」と話した。「ケイブ オキナワ」の詳細は
https://cave-okinawa.com/

ライトアップされた洞窟で来場者の写真を撮る池原勇矢代表(左)22日、うるま市石川嘉手苅の「CAVE OKINAWA」

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