重力レンズ効果を受けた遠方銀河の輝き ウェッブ宇宙望遠鏡が観測

こちらは「かみのけ座(髪座)」の方向にある銀河団「SDSS J1226+2152」の様子です。銀河団とは数百~数千の銀河からなる巨大な天体のこと。何百億~何千億もの星々の集まりである銀河が何百~何千と集まった銀河団、その途方もない質量は「重力レンズ効果」をもたらすことがあります。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測された銀河団「SDSS J1226+2152」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, J. Rigby and the JWST TEMPLATES team)】

重力レンズとは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象です。

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で取得したデータをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。

画像にはSDSS J1226+2152の質量がもたらす重力レンズ効果によって歪んで見える銀河が幾つか写っています。欧州宇宙機関(ESA)によると、ここで最も注目されているのは「SGAS J12265.3+215220」と呼ばれている銀河です。SGAS J12265.3+215220の像は画像中央に位置する白い銀河の近くで2つに分かれていて、1つは中央の銀河のすぐ右隣にあるピンク色のいびつな像、もう1つはその右側に少し離れたところで弧状に長く伸びたオレンジ色の像として写っています。

ESAによれば、SGAS J12265.3+215220として観測されているのはビッグバンから約20億年後、つまり今から約118億年前の宇宙に存在していた銀河の姿だといいます。ウェッブ宇宙望遠鏡による重力レンズ効果を受けた明るい銀河の観測データは、待ち望んでいた天文学者たちが遠方銀河での星形成を調査するために使用しているということです。冒頭の画像は“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として、ESAから2023年12月19日付で公開されています。

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文/sorae編集部

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