「推し活」×「街歩き」をテーマに「推し巡り」 長崎市出身の平野さん 聖地清掃や写真展 

自ら作成した長崎の魅力を発信する同人誌について笑顔で話す平野さん=長崎市出島町

 「推(お)し活(かつ)」×「街歩き」をテーマにしたアニメなどの聖地巡礼、舞台探訪の情報サイト「推し巡り」を運営する推し巡り協会理事長の平野隆成さん(30)=長崎市在住=。「アニメを通して地域の魅力を知ってほしい」-。舞台になった場所の清掃や写真展開催など、長崎の「推し活」に力を入れている。

 同市出身。大学進学や就職などで県外で7年間過ごした後、長崎市にUターンした。現在、市内のスポーツジムでトレーナーとして働く。
 「推し活」のきっかけは、同市を舞台にしたアニメ「色づく世界の明日から」(2018年放送)との出合い。同作は色が見えない主人公の少女が祖母の魔法の影響を受け、2078年の世界から2018年の長崎市に送られる物語。放送を見た後、登場する長崎港や眼鏡橋などの風景を多くの人に伝えたくなった。
 大学時代に独学で身に付けたウェブ制作の技術を生かし、21年8月、作中に登場する場所を地図や写真で見ながら聖地巡礼ができるサイトを制作し運営を始めた。活動の幅はさらに広がり、「iPhone(アイフォーン)写真家」としてもX(旧ツイッター)で長崎の観光地などを撮影し、発信している。
 「推し巡り」協会を発足させたのは今年8月。同作をテーマにした写真展を5月に市内で開き、県内外から416人が訪れた。8月には、東京であった日本最大の同人誌販売会「コミックマーケット102」で、同作をテーマに制作したガイドブックを販売。会場とオンラインで計150部を完売した。反響の大きさに手応えを感じ、同協会を拠点にして、同作の「聖地」をPRしていく。
 今月上旬、同作の舞台になった同市西海町の「森の魔女カフェ」に、ファン有志10人と購入したアクリルアートを贈った。同作の特徴を詰め込んだアートをゆかりの場所に展示してもらい、交流の場を広げる狙いだ。
 12月17日、同作の舞台の一つ、同市出雲1丁目の出雲近隣公園。寒風が吹き付ける中、『清地化(せいちか)プロジェクト』と称した2回目の清掃活動に励んだ。聖地を求めて訪れるファンをもてなしたいという思いからだ。長崎港を眼前に見下ろす公園は草が生い茂り、ごみも散らかっていた。平野さんのほか、同作のファンら5人が約2時間かけて、ごみ袋10袋分の枯れ草やごみを集めた。初めて参加した同市銀屋町の岩本拓己さん(24)は同作を見たことをきっかけに、福岡から長崎へ移住。「せっかくの聖地だからきれいな状態で来てほしい」
 長崎の魅力を知ってほしい一心で、こつこつと活動する平野さん。清掃活動も単なるボランティアではなく、一つのイベントと考えている。今後も継続することで、地域住民と交流し、世代を超えたコミュニティーづくりを目指す。「訪れた人に長崎を好きになってもらいたい」-。この思いを原動力に動き続ける。

長崎港を望む公園で清掃活動をする参加者=長崎市、出雲近隣公園

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