【有馬記念】「憧れるのをやめましょう」ドウデュースと武豊、“イクイノックス・ロス”を吹き飛ばす歴代名馬の残像

ドウデュース/2023年有馬記念(C)Toshihiko Yanagi

第68回有馬記念(GI、芝2500m)は24日、中山競馬場で行われ、2番人気のドウデュース(牡4、栗東・友道康夫厩舎)が優勝した。鞍上は武豊。

ドウデュースは2歳時の朝日杯フューチュリティS、3歳時の日本ダービーに続くGI3勝目。武豊は2017年のキタサンブラック以来、同レース史上最多の4勝目となった。

◆【実際の映像/有馬記念2023】「もう1回行こう。フランス行こう」ドウデュース・武豊のジョッキーカメラ 大観衆の“ユタカコール”も

■ディープ、キタサン、キズナの姿

総獲得賞金22億1544万6100円で歴代1位となったイクイノックスは、ジャパンCを最後に引退。最強馬不在の大一番は、1番人気のジャスティンパレスから7番人気のスターズオンアースまでが単勝オッズ1桁台という混戦ムードで行われた。

レースはスタートから見せ場があった。スターズオンアースとC.ルメールは8枠発走を相殺する好スタートを決め、早々と好位のインを確保。ドウデュースと武豊はじわっと出てスタート直後は最後方。徐々にポジションを上げながらも、鞍上の「じっくりいこう」という声が聞こえてきそうな落ち着き払った騎乗だった。

最終コーナー、タイトルホルダーは1F12秒台でペースを緩めることなく、リードを保ち直線へ。各馬、手綱が動き始めるなか、ドウデュースと武豊は大外からほぼ馬なりのまま進出し、直線に向くと早くも2番手のスターズオンアースに並びかける。

その姿はまるで2006年有馬記念のディープインパクトだった。

タイトルホルダーとスターズオンアースを競り落とし、1着でゴール板を駆け抜けると鞍上・武豊はステッキを天高く掲げ勝ち名乗り。そのシーンは2017年有馬記念のキタサンブラックと同じだった。

自身の怪我からの復帰とダービー馬の復活に、お立ち台で武豊は「私も、ドウデュースも帰ってきました!」と開口一番。そのメッセージは2013年日本ダービーのキズナを回想させた。

■武豊「もう1回行こう、フランス」

戦前、盛り上がった有馬記念のサイン馬券に、【ド】ウデュース→【ジャ】スティンパレス→スターズオンア【ース】の「ドジャース馬券」というものがあった。ジャスティンパレスが4着に敗れたことでこのサインは実現しなかったが、同時に思い出したのが、WBCで大谷翔平がナインを鼓舞した言葉。

「憧れるのをやめましょう」

レース結果は、イクイノックスが圧勝したジャパンCの3、4、5着馬による上位独占。戦績だけを見ると、改めて世界ナンバーワンホースの強さが浮き彫りになる結果だが、ドウデュースと武豊は、イクイノックスの幻影を追っていないように思える。

レース後、JRAより公開されたジョッキーカメラでは動画の最後に「もう1回行こう。フランス行こう」と、昨年19着に敗れた凱旋門賞への再戦を示唆する武豊の声があった。既に人馬は前を向いている。

JRAのキャッチコピーは「HERO IS COMING」

ヒーローは記憶の中で走り続け、そしてまた新たなヒーローが登場する。まるで歴代名馬のシーンをトレースしたかのようなドウデュースと武豊のグランプリ戴冠劇は、“イクイノックス・ロス”を吹き飛ばすメッセージとなったはずだ。

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(T.Yamada/SPREAD編集部)

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