【今週のサンモニ】アベガー番組の面目躍如!|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。「裏金問題」「ガザ問題」「辺野古基地問題」とクリスマス・イブの朝もてんこ盛りで絶好調。

思わず笑顔でコメント

2023年12月24日の『サンデーモーニング』でも、先週に引き続き、自民党の政治資金収支報告書不記載問題、いわゆる「裏金問題」についてトップニュースで報じました。

アナウンサー:年末になっても拡大を続ける自民党の裏金疑惑、火曜日、東京地検特捜部は安倍派と二階派の強制捜査に踏み切りました。(中略)。金曜日、政調会長を辞任した萩生田氏は…

萩生田光一氏(VTR):私が戦列を離れるというのは、本当に申し訳ない限りでございます。一兵卒に戻って、平場でしっかり仕事をしたいと思います。(笑い声)どうぞよろしくお願いいたします。

関口宏氏:自分たちに都合の悪いもの(政治資金規正法)はなるべくザルのように作りたい気持ちはわからないじゃないのですが(笑)

「政治資金規正法」はザルか…「政策活動費」として“キックバック”?使途・入手先不明のカネとは【サンデーモーニング】 | TBS NEWS DIG

清和会の不祥事に対して水を得た魚のように畳みかけて叩くのは、アベガ―番組の面目躍如と言えるかと思います。

感情をコントロールできないのか、司会の関口氏をはじめコメンテーターの浜田敬子氏・畠山澄子氏もコメント時に思わず笑みをこぼし続けてしまうという展開に、この人達も苦労しているんだなと、思わず笑みを浮かべてしまいました(笑)。

勿論、政治の不祥事に対して厳しい批判を行うのは、マスメディアの重要なミッションです。しかしながら、その批判は合理的な根拠に基づくものでなければなりません。そうならないのがこの番組の奥が深いところです。

テレビ報道の狡猾な騙し

寺島実郎氏:裏金事件の本質は何か、日本人としてよく考える必要がある。つまり、なぜ政権中枢の派閥にキックバックができるほどのカネが集まったのかという構造の問題だ。つまりアベ政治とかアベノミクスというのは、まるで蟻が蜜に群がるように権力への過剰同調を招いたんじゃないか。

この問題の本質は、寺島氏が言うような「パーティー券で収入を得たこと」ではなく、「パーティー券収入のうち一部を収支報告書に記載しなかったこと」です。この未記載分の収支が不明となるので政治資金の不正利用が理論上可能になるのです。

その本質を理解していないのか、寺島氏は政治資金の量を問題視しています。その不記載額の大きさも250億円ほどの年間収入がある自民党にとっては1%にも満たない額であり、「権力の過剰同調」と断罪するのは極めて非論理的です。

浜田敬子氏:VTRで萩生田氏が発言した会合があったが、笑い声が起きていた。本当に緊張感がない。内閣支持率を見ると、岸田政権は過去最低になっているが、国民のその怒りとか問題に対する危機意識と自民党はずれているのではないか。政治改革をしていく気持ちは政治の中にあるのかというと、30年前の政治改革の時のような、若手が声を上げるとか、そういった声が聞こえてこない。

視聴者の感情を害する一瞬の笑い声を制作映像にわざわざ取り込むことによってスケープゴートに悪党の印象を植え付けた上でコメンテーターに人格を非難させるというのは、『サンデーモーニング』お得意の印象操作です。

このような伏線的な他愛もない出来事で問題の論点を巧みに変更する手法は、魔女裁判に多用される狡猾な騙しであり、テレビ報道の危険な一面と言えます。一瞬の笑いが起きた要因は不明ですが、そのことで自民党の危機意識がずれていると決めつけて非難するのは軽率すぎる概括です。

政権交代ができないのは野党の責任

浜田敬子氏:もう一点、アベ一強政治を作ったのは何だったのか。特定の団体や企業に対して、そこから金を集めることで利益誘導すると。企業ではないが、統一教会問題にしても、票を貰うことによって家族政策とかジェンダー政策を歪めていったわけだ。今回の裏金は企業・団体からの事実上の献金なので、それによって特定の企業や団体に対して有利な政策をしなかったのか。民主主義を歪めるような実態をアベ一強政治の時代に作ってしまった。

今回の事案に関連して、自民党が特定の団体や企業に対して利益誘導した証拠はありません。浜田氏は憶測を前提にして勢いで自民党を叩いています。

統一教会問題についても、浜田氏が指摘する家族政策やジェンダー政策は、自民党の元々の公約であり、統一教会がその公約を支持したに過ぎません。

つまり浜田氏は、原因と結果の因果関係を取り違えているのです。また、今回の問題と「アベ一強政治」との因果関係は不明です。公共の電波を使ってスケープゴートを憶測で非難している浜田氏は、明らかに民主主義を歪めています。

畠山澄子氏:本当にあり得ない。特定の派閥というより自民党全体に蔓延していてもおかしくない。

この事案を「本当にあり得ない」とするのは畠山氏のおっしゃる通りと考えます。

献金については、政治資金として許容されている支出項目に使用し、(合法の範囲内で)許容されていない項目については、文書交通費などを利用するのが適切です。

ただし、畠山氏が「自民党全体に蔓延していてもおかしくない」という憶測を根拠に批判していることについてはフェアでありません。

松原耕二氏:自民党は30年前の政治改革の時に政治改革大綱で「国民感覚とのズレ」という言葉を使って反省して示した。20年後、下野した時に「国民感覚とのズレ」と同じ言葉を使って反省して見せた。ところが、また一強になってしまうと国民感覚などどこ吹く風で繰り返しだ。結局は頻繁な政権交代がないと緊張ある政治は生まれない。

政権交代がないのは自民党の責任ではなく、政権運営能力を国民に認められていない野党の責任です。また政権交代を目的化するのは本末転倒です。基本的に、政治の結果として政権交代があるのであって、政権交代の結果として政治があるのではありません。

なお、マスメディアのミッションは政権の監視であり、政権の転覆ではありません。TBSテレビの報道はしばしばこの一線を越えています。

政府に無責任なお説教

ガザの問題をめぐっては、この日も寺島氏から日本政府に対するお説教がありました。

寺島実郎氏:日本の及び腰の平和主義。つまり対米協調を軸にしながら国連での停戦を支持する方向に動いているが、日本が今言わなければいけないのは、この国自体が敗戦国としての悲劇の歴史を背負い、戦争というものに立ち向かっていって「真剣にやめろよ」という提案、あるいは復興に対する提案も含めて、日本が本当にこういうことを考えていることを見せなきゃいけないのに、完全に腰が引けた状態で米国を支持する枠組みの中でこの問題に関わっているから、何をやろうとしているのか外から見てわけがわからない。これが問題だ。

このコメントは事実とまったく異なります。今回のガザ問題で、日本政府は米国とは最初から逆を向いています。まず、国連における停戦決議の賛否は米国と真逆です。

また、10月のG7のイスラエル自衛支持宣言に対しては、日本一国だけ賛成しませんでした。さらに、11月にはG7議長国として米国を説得し、戦闘休止を支持する外相声明を発表しました。

ガザ支援についても迅速に発表し、上川外相がイスラエル・パレスチナ双方の外相と停戦に向けて会談しました。この日本に対して「腰が引けている」「何をやろうとしているのか訳がわからない」とする寺島氏の主張こそ、訳がわかりません。

精力的に問題解決に取り組んでいる日本政府に対して、何の具体的な提案も示すことなく、「真剣にやめろよ」という考えを示すよう求める発言は、あまりにも高慢で無責任です。公共の電波を使ってこんなデタラメな主張を社会に垂れ流しているTBSテレビに強く抗議します。

【今週のサンモニ】偏向キャスティングで盲点を見抜けない|藤原かずえ | Hanadaプラス

対話するのに司法の決定は大前提

辺野古基地問題についてもいつも通りの無責任なスタジオトークが展開されました。

松原耕二氏:辺野古問題で感じるのは対話の不在だ。亡くなった翁長知事に、野中広務氏が「頼むから基地を貸してくれ」と土下座をした話を何度も聞いた。「昔の政治家には情があった」と。

松原氏は、議論するのではなく個人的感情に訴えて土下座で説得するような反民主主義的な政治手法を肯定しています。このような任侠の世界のような問題解決は、政治家が国民の負託を勘違いしているものであり、断じて許容する訳にはいきません。

過去の経緯として、自民党政権が沖縄県と何度も繰り返し対話を続けた結果、沖縄県の納得の下に普天間飛行場の辺野古移転が決定されたことは歴然たる事実です。辺野古基地移転によって、普天間基地周辺住民の安全を確保すること、および沖縄県における米軍基地占有面積を減らすことが確実に実現できます。

司法は、沖縄県がこの工事の設計変更を承認せずに放置することは公共の利害を侵害すると判断しました。日本は法治国家であり、行政が対話するにあたっては、この司法の決定を大前提とする必要があります。

畠山澄子氏:県民投票の時に当時の防衛大臣が「沖縄には沖縄の民主主義があるが国には国の民主主義がある」と言った。沖縄の民意を押しつぶすことに私たち本土の人間は抗わなければならない。

まず、沖縄県も本土です。被差別意識を喚起するような言葉については避けることが必要です。また、司法の決定に抗って実力行使に出るようなことがあれば、それは暴力に他なりません。「私たち本土の人間は抗わなければならない」という国民に対するアジテーションは、明確な放送法違反です。

ちなみに、沖縄県知事は辺野古基地に反対していますが、普天間基地が位置する宜野湾市の市長も辺野古が位置する名護市市長も移設を容認しています。

何よりも、古くから米軍と交流がある辺野古の住民も大半が移設を容認しています。畠山氏は、その人たちの民意については、抗って押しつぶしてもよいという考えなのでしょうか。

辺野古移転の反対を理不尽に正当化する理由なき反抗

あえて言えば、この問題を煽りに煽って複雑にしてきたのは、TBS『サンデーモーニング』をはじめとする日本のマスメディアと左翼活動家です。これ以上、日本国民、沖縄県民、宜野湾市民、名護市民、辺野古住民を混乱させるのは厳に慎んでいただきたく思います。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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