京都府八幡市で113年続く老舗和菓子店 次期11代目の女性店主は「観光応援団」

「八幡の活気を取り戻したい」と話す井口さん(八幡市八幡・やわた走井餅老舗)

 石清水八幡宮の門前に店を構える「やわた走井餅老舗」(京都府八幡市八幡)。1764(明和元)年に大津市で創業し、1910(明治43)年に現在の場所に移って以来、銘菓「走井餅」で参拝者をもてなしてきた。井口香苗さん(40)は、伝統の味を守る次期11代目店主として店を切り盛りする。

 大学卒業後、管理栄養士として病院で勤務した。家業を継いだのは25歳の時だった。長女ということもあり、「店を継ぐんだろうなといつからか思っていた。ドラマチックなきっかけは特になかった」と笑う。

 かつては初詣でにぎわう正月の収入で1年を乗り切ることができた。しかし、参拝者は年々減少し、家業を継いだ当時は売り上げは大きく減っていた。事業拡大に向けて、もなかなどの新たなメニュー考案、飲食スペースの拡張などを進めた。

 地元と連携した菓子も作ってきた。「八幡で110年以上続けてきたお店。菓子屋として役立てることをしたかった」。夏場には、地元産のナシやイチゴを使ったかき氷を販売する。近くの善法律寺に伝わる餅「亥(い)の子餅」を資料をもとに復活させ、八幡発祥の「松花堂弁当」の四つ切り箱をモチーフにしたデザートも考案した。

 気にかけるのは、経営だけではない。「まずは多くの人に八幡のことを知ってほしい」と、15年にわたって観光情報や地域の行事の発信を続けている。インスタグラムなどのSNSは毎日更新しており、「すてきな場所や歴史がありすぎるぐらいの場所。書くネタには困らない」と誇らしげだ。

 まちあるきのガイドを務め、2022年に就任した八幡市観光協会の「八幡市観光応援団」では見どころなどのPR活動に尽力する。「まだまだ伸びしろのあるまち。訪れる人を増やすことで、にぎわいを取り戻したい」と意気込む。

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