日本からウクライナへ帰国した大学生 「試験期間もうれしい」 鳴りやまない空襲警報のなかで求める“日常” キーウの街にはクリスマスツリー

ウクライナは、ロシアによる侵攻がはじまって2度目の冬を迎えています。避難していた日本からウクライナへこの秋に戻り、今は首都キーウで暮らしている女性に、いまの暮らしについて聞きました。

ウクライナの首都、キーウに住むファジリャ・ボロジナさんです。キーウの大学で建築を学んでいます。21歳の誕生日を迎え、友達にパーティーをしてもらったそうで、部屋にはたくさんの風船が飾られていました。

去年10月、ファジリャさんは妹のマリアさんと共に、母親の知人を頼って広島市に避難してきました。

広島で過ごしたおよそ1年間…、大事な友達もできて、かけがえのない時間を過ごしました。しかし、2人には将来への強い思いがありました。

帰国直前のファジリャさん「私たちは世界の状況は変えられないけど 自分たちの人生は変えられます。自分たちの将来への歩みは進められる 明るい未来へ」

ファジリャさんは、(いつ)広島を出発し、いくつかの国を経由して、(いつ)ウクライナに戻りました。

首都のキーウは、ウクライナの他の都市に比べると比較的安全だろうということで、かなり人が戻ってきているそうです。街中にも多くの車が走っています。

ファジリャさん「電気や水道、ガスは問題ないです。今は大丈夫。この先…来月どうなるか分からない。でも今のところは大丈夫」

広島を離れて2か月。ファジリャさんに今の生活について聞きました。帰国後は妹のマリアさんと、お気に入りのレストランに行ったり、友達と出かけたりしたそうです。今は、念願だった大学生活を送っています。

ファジリャさん「前回大学に行ったのは2022年の冬で、今こうやって大学に通えるのがうれしい。試験期間を体験できることすらも嬉しい」

ただ、戦争は終わっていません。

ファジリャさん「2週間前、とても…うんん…本当に怖かった」

11月25日未明、ロシアの侵攻開始以降、「最大規模」となる無人機によるウクライナへの攻撃がありました。

ファジリャさん「音が聞こえた。私は別の部屋にいて、母親から『今どこにいるの? 』と電話があった。夜にとてつもない音が聞こえて私はとにかく叫ぶしかありませんでした」

今もキーウでは、週に1、2回は空襲警報が発令されます。その度に市民はシェルターや地下鉄に避難します。最近では警報が解除される前に、タクシーに乗って仕事に戻る人の姿も見かけるそうです。

ファジリャさん「みんな仕事に行かなければいけない。警報が5時間出ていたら、勤務時間のほとんどを地下鉄の駅で過ごすことになってしまうから。みんな自分で判断するようになっている。みんな慣れてきちゃってる。よくないことだと思う…」

「(戦争が終わらないことについてはなんていってる?)戦争が始まった時はみんな2週間とか2か月とか、すぐに終わると信じていた。でももうすぐ2年。正直…いまは誰も戦争はすぐには終わるなんて考えていないと思う」

ファジリャさんが大学の課題で制作中の作品を見せてくれました。

ファジリャさん「庭のデザインを考える課題があったのですが、ウクライナと日本の文化を融合したものをつくろうとしていて…。日本は私にとって、とても大切な場所で、そして広島での時間は私に希望を持たせてくれた。将来もきっと大丈夫だと。もう一度行きたい。一度と言わず何度でも…!」

ただ、そんな話の最中にも…。

ファジリャさん「いま、空襲警報が出ている。(外をのぞく)上空近くにいるみたいだけど、音が聞こえないから…」

ウクライナは、戦争が始まってから2回目のクリスマスです。

ファジリャさん「去年は計画停電で真っ暗だった」

キーウの街には、クリスマスツリーが飾られていました。そして、日常を取り戻そうと、生きる人たちの姿がありました。

ファジリャさん「メインストリートにクリスマスツリーがある。たった一つだけのクリスマスツリー」

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