選択を繰り返すローグライト的楽しさと感情に訴えかける物語!終末世界RPG「フラットマシン」レビュー

フラットマシン」をレビュー。終末世界を舞台に、門番として集落を守るRPG。ローグライト的なゲーム性に加え、感情を揺さぶるストーリー的魅力を併せ持った一作。その魅力を紹介する。

「フラットマシン」は、ズィーマからリリースされたスマートフォン向けのローグライト・RPG。舞台となるのは終末世界のとある集落。60日後にやってくるフラットマシンという存在により、この集落は消滅する運命にあった。そんな状況で、この集落の門番ロボットとして、危険な来訪者から集落を守るのがプレイヤーの仕事だ。避けられない消滅を前に、1日でも長く集落を存続させる…。この上なく終末を感じさせるこの前提のもと、プレイヤーは繰り返し選択を行っていくことになる。

■1日1イベント!耐久力・治安・お金のバランスを踏まえて行動選択

本作は、1日単位で進行していく。1日に1回、イベントが発生。フラットライン襲来が60日後なので、60回のイベントをこなすとエンディングを迎える。

イベントの基本的な選択肢は、「門番する」と「やすむ」。「門番する」を選べば主人公の耐久力が減少、「やすむ」を選べば耐久力が回復する。耐久力がゼロになるとゲームオーバーなので、耐久力を見つつ、適度に「やすむ」を選ばなければならない。

…といっても、もちろんいつでも好きな時にやすめるわけじゃない。集落に敵対的な存在が来訪した場合、「やすむ」を選ぶと集落の治安が減少してしまう。

敵対的な存在に対して「門番する」を選ぶと、戦闘が発生。本作の戦闘はターン制で、画面をタイミングよくタップすることで攻撃を行う。自分のターンになると画面にゲージが出現、タップでゲージを止めた際に「HIT」や「CRITICAL」だったら攻撃成功、敵にダメージを与えることができる。それ以外の場所にゲージが止まると「MISS」…攻撃失敗だ。

戦闘を行えば、大なり小なり敵の攻撃を受けることになって、さらに耐久力が減ってしまう。なので場合によってはあえて「やすむ」を選ぶという判断も出てくるだろう。とはいえ、戦闘には見返りもある。アイテムやお金の獲得だ。

戦闘の結果、敵がアイテムをドロップすることがある。また、お金を貯めておけばトレーダーが訪問するイベントでアイテムを購入することも可能。アイテムによって主人公を強化すれば、その分、集落の存続する日数もアップする。つまり、耐久力・治安・お金といったパラメーターのバランスを踏まえて、どんな選択をとるのかが重要。現時点での耐久力を考えると、「やすむ」を選んだ方が得策だが、今後の育成を考えると「門番する」を選んだ方がいいかもしれない…といった具合に、カンタンには選べない局面も多い。こうした悩ましさは、ローグライトRPGの醍醐味と言える部分で、本作のゲーム的おもしろさを担う部分だ。

■寂しさとユーモアとやさしさ…!ストーリー的魅力

本作の魅力は、ローグライトRPG的な楽しさだけではない。終末世界を舞台としたストーリーも魅力。それもそのはず、本作を制作したクリエイターであるズィーマは、「ポストアポカリプスベーカリー」や「カタストロフィレストラン」など、終末世界を舞台にした作品を「やさしい終末世界」シリーズとしてリリースしており、根強いファンを抱えている。そして本作もまた、「やさしい終末世界」シリーズの一作だ。

ストーリーや世界観といった面で、まず真っ先に魅力を感じさせるのが、本作のキャラクターだろう。イベントに登場する敵、旅人、集落に暮らす人々…といったキャラクターがどれも独自の魅力を持っている。たとえば敵として登場するホッチキス、電信柱。さまよえる来訪者として登場する電子レンジなど。人間である前にそもそも生物ですらないケースも多いのだが、いずれもキャラクターとしての怖さやかわいらしさを持っており、「終末世界に生きるもの」としての存在感を有している。

本作のストーリーは、主に敵以外の来訪者や、集落に暮らす人々との会話を通して描かれていく。会話時の選択肢や、アイテムの使用によってストーリー展開は変化。最終的なエンディングも異なるものとなる。

筆者が特に気にいったキャラクターが、ヒロインのヤエナ。とある出来事によって4つの腕を持つに至ったミュータント的な女性だ。ヤエナは進行次第で戦闘時に仲間キャラクターとして参戦するほか、恋愛的なストーリールートを選択することもできる。終末が迫る中で語られるヤエナの過去とその選択に、筆者は思い切り泣いてしまった。

ヤエナ以外にも、村長やトレーダー、さらには敵として登場するモヒカンの略奪者…などなど、本作のキャラクターはどれもビジュアル的・ストーリー的に強い魅力を持っており、感情に訴えかけてくる。見た目的・設定的なユーモアでクスッとさせられ、終末世界という状況を踏まえたストーリーによってホロリ、寂しい気持ちに。けど、決して不快な感情にはならない。ストーリー全体を通して、キャラクターたちへのやさしい視線が感じられるからだ。

■RPG好きならプレイしないのはもったいない!オススメの一作

ここまで紹介してきた通り、本作は、ローグライト的な選択のおもしろさと、感情に訴えかけてくるストーリーという2つの面で魅力を持っている。シリーズファンはもちろん満足できるだろうし、シリーズ未体験であっても、RPG好きなら確実に満足できるだろう。いや、RPG好きならプレイしないのはもったいないと断言できる。それくらい、楽しい。

実は、筆者は今作で初めて「やさしい終末世界」シリーズに触れるのだが、なぜこのシリーズに根強いファンが生まれるのか大いに理解できた。なので、本作をきっかけに「やさしい終末世界」シリーズの他作品もプレイする予定だ。今から、本作も含めた「やさしい終末世界」シリーズにどっぷり浸れるのが楽しみでならない。

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