クビサ「どんな犠牲を払ってでもレースをする必要はないと気づいた」ウイリアムズでのF1復帰は間違いだったと語る

 元F1ドライバーのロバート・クビサは、今になってみると2019年にF1グリッドへ夢の復帰を果たすのにウイリアムズを選ぶほど「よくないことはなかった」と考えている

 クビサのF1復帰は世界中のファンの気持ちを捉えた、心温まるストーリーだった。2011年にラリーの事故でキャリアを脅かされるようなひどい怪我を負ったクビサは、F1への復帰に向けて道を切り開き、苦戦していたウイリアムズのシートを獲得した。

 クビサのカムバックは大きな興奮に包まれていた。しかしながら、現実は大きく異なっていた。ウイリアムズのFW42は平凡なマシンであり、クビサはパフォーマンスを引き出すのに苦戦した。最善を尽くしたものの、彼のシーズンは期待外れで、獲得ポイントはドイツGPでトップ10入りした際の1ポイントだけだった。

2019年F1第11戦ドイツGP ロバート・クビサ(ウイリアムズ)

『Przeglad Sportowy』の最近のインタビューで、クビサは自身が直面した困難と、F1復帰は間違いだったことを認めた。

「何年もかけて僕はある気づきの経験に達した。どんな犠牲を払ってでもレースをする必要はないということだ」と2008年のカナダGPで優勝を飾ったクビサは説明した。

「適切な環境を見つけたいと思っている。その環境で気分をよくするために何が必要か分かっているからだ。そして現在の状況は、そうした精神的な安らぎをある程度意識できる」

 2019年のウイリアムズでのチームメイトがジョージ・ラッセルだったことで、クビサが直面した課題はさらに難しいものになった。当時、才能あふれる若手としてもてはやされていたラッセルは、一貫してクビサを上回り、両ドライバーのパフォーマンス差を浮き彫りにした。このことはクビサにかかるプレッシャーを増すだけで、マシンの欠点を隠すことがさらに難しくなった。

「F1に復帰することに関して、考え直すべきことがある。ウイリアムズでレースをする面で言えば、これ以上よくないことはなかっただろう」

「公平を期すために言うと、僕はあのグループ(ウイリアムズ)に大きな敬意を抱いている。チームでは多くの人たちが、自分たちが何をやっているのかよくわかっていたからだ。でも残念ながら、僕たちは間違った時期に間違った場所にいた」

2019年F1第9戦オーストリアGP ジョージ・ラッセル&ロバート・クビサ(ウイリアムズ)

 クビサは2019年末にウイリアムズを離れ、翌年はアルファロメオでリザーブドライバーの役割に就いた。2021年、クビサは新型コロナウイルスに感染したキミ・ライコネンの代役を務め、オランダGPとイタリアGPに出走した。

 その後2022年にクビサはスキルを活かし、プレマ・レーシングからWEC世界耐久選手権に参戦した。2023年にはチームWRTに移籍し、チームメイトのルイ・デレトラズとルイ・アンドラーデとともにLMP2クラスでタイトルを獲得した。2024年はWECのトップカテゴリーであるハイパーカークラスにステップアップし、カスタマーチームのAFコルセでフェラーリ499Pを走らせる予定だ。

「AFはモータースポーツ史上大きな成功を収めたチームのひとつだ」とクビサはコメントした。

「僕たちは素晴らしい仕事ができると確信している。さらに、僕はイタリアのチームに戻ることになるわけだど、これは決して小さなことではないよ」

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