「NewsPicks for Business」が大きく変化する今の福岡を伝えるビジネスマガジンを誕生させたワケ

2023年11月、福岡経済にフォーカスしたビジネスマガジン『Ambitions FUKUOKA』が刊行されました。発行したのは、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を運営するユーザベースのグループ会社、株式会社NewsPicks for Business。全国的に紙のメディアがなくなる中で、なぜ今、福岡に特化したマガジンを作ったのでしょうか。その舞台裏に迫ります。

市長から経営者、野球選手まで多彩な顔触れ

11月14日に発売された『Ambitions FUKUOKA』。

私も制作チームの一員として一部の記事に関わっていたが、完成したマガジンを見て、コンテンツの充実ぶりに目を見張った。

行政トップは、福岡市長の高島宗一郎さん、北九州市長の武内和久さん。

企業からは、JR九州の古宮洋二社長、ふくおかフィナンシャルグループの五島久社長、グルーヴノーツの佐々木久美子会長、ドーガンの森大介社長をはじめ、大手からベンチャーまで多彩に。

さらに、堀江貴文さん、中澤裕子さん、福岡地域戦略推進協議会(FDC)の石丸修平事務局長、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手、大学、グルメまで、とにかく幅広い分野でキーパーソンが続々と登場し、熱気あふれる一冊に仕上がっている。

Uターンして感じた福岡の面白さを発信したい

福岡を舞台にマガジンを作った理由、取材を通して気づいたことなどについて、同マガジン編集長の大久保敬太さんと副編集長の田中智恵さんに聞いた。

ふたりが所属するNewsPicks for Businessは、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」で培ったプロデュース力とソリューションを組み合わせて、企業の変革とビジネスの進化にコミットする会社。

大久保さんは福岡県糟屋郡、田中さんは嘉麻市出身で、それぞれ数社を経て、東京の同社で働いている。

副編集長の田中さん(左)

「Ambitions FUKUOKA」が誕生したのは、2022年に田中さんが福岡にUターンしたことがきっかけだ。

田中さん

私は広告のセールス担当で、14年ぶりに福岡に戻り、主にオンラインで東京の会社さんとやり取りしていました。

福岡に住んでみると、大企業が積極的に新規事業に取り組んだり、スタートアップと行政がうまく連携したり、天神ビッグバンや博多コネクティッドでまちがすごく変わったりしているのを目の当たりにして、これはすごい、ぜひ発信したいと思いました。

一方で、福岡はコミュニティが強いけれど、七社会(福岡の主要7社の会)とスタートアップ、福岡と北九州、福岡と東京のような越境はあまりなくて、もったいないなと。
マガジンを通して互いを知り、交わることでビジネスチャンスを創出できると考え、弊社にマガジンを発刊したいと提案してOKをもらいました

先進的なマガジンで人をつなぎ、新たな動きを起こす

2023年5月から本格的に動き出し、編集経験が豊富な大久保さんが編集長を務めることに。

およそ5か月間の制作中、大久保さんは東京と福岡を行き来して、福岡では実家に滞在。東京のスタッフに加えて、福岡に住むクリエイターも入り、総勢10数名で制作にあたった。

編集長の大久保さん

Ambitionsのターゲットはビジネスパーソンだ。

田中さん

福岡には、安定して堅実な新聞や経済マガジンはあるけれど、先進的でストーリーを語る紙メディアがなくて。
先進的で未来志向のマガジンを出すことで、福岡をざわつかせたかったんです。マガジンは最初の1歩で、人をつなげたりイベントやビジネスを生んだりと多様な展開を考えていました。

企画がどんどん立ち上がり、人の紹介もあって、幅広い人たちにアプローチ。

豪華な面々がそろう中で、表紙を飾ったソフトバンクホークスの柳田選手は、シーズン中に取材に応じてくれたというから異例だ。

大久保さん

僕は編集系の人間なので、さすがにクライマックスシーズン直前に選手の取材は無理と思っていたのに、OKと聞いて驚きました。

田中さん

たまたまソフトバンクの方と知り合い、相談してみたらダメもとで広報につないでくれて。柳田選手の予定次第という話だったものの、実現しました。

私は広告系だから何がNGか分からず無邪気にいっちゃって…逆に大久保さんが出す企画で私なら無理と思うこともあり、キャリアの違うふたりだったから、これだけすごい方々に協力してもらえたのかもしれません(笑)

特に印象に残っているのは、どの企画だろうか。

大久保さん

FDC(福岡地域戦略推進協議会)の石丸さんが、リッツカールトン福岡が入っている大名ガーデンシティの前で地域の夏祭りをやっている光景が福岡らしいと話されていたのが印象に残っています。
僕も福岡に滞在中、そこが豪華なカンファレンスの会場になり、昼間は地元のおじいさんたちが体操しているのを見て、こうして混ざっているのが福岡の面白さだなと実感しました。

田中さん

私はJR九州の古宮社長の話が一番衝撃で。非・鉄道で75%の利益を目指すという話自体も面白いし、新規事業でどの企業も苦戦しているのに、JR九州はトップ自らやっているからうまくいくのだと納得して。そんなモデルを発信すれば、全国の人が学べて、つながりも増えていくと思いました。

みんなの愛と越境で、福岡はさらに進化する

11月14日にマガジンを発売。

前夜には関係者が集まる刊行パーティが開かれて、大盛況だった。発売後、「思った以上に反響があってうれしい」と田中さん。福岡の経済誌での取材やイベントへの登壇、ラジオ番組の出演、コンテンツを作りたいという相談など、さまざまな話が舞い込んでいるという。

マガジンを作ってみて、ふたりには気付いたことがあるという。

田中さん

越境したつながりが重要だと思っているのは私だけじゃないと分かりました。例えば、刊行パーティでFDCの石丸さんが『福岡と北九州でもっと連携していきましょう』と壇上で呼びかけ、会場で福岡と北九州の方が交流する姿を見て、うれしく思いました。

大久保さん

福岡の方は福岡が大好きだけど、今はまちが変わろうとしているタイミングで、前向きな危機感を持ち、自分たちも進化しようとしている方々がたくさんいました。僕らも仲間に入れてもらって、福岡の経済を一緒に盛り上げていきたいです。

最後に、今回改めて見えてきた福岡のポテンシャルや魅力を教えてもらった。

大久保さん

福岡に滞在して多くの人に会って、まちも人も交通もイベントも、とにかくすごく動いていて元気だと実感しました。しかも、今が最高ではなく、ここからさらにすごいことが起こるという祭りの前のような高揚感もあって、福岡は本当にすごいと思いました。

田中さん

取材で感じたのは、福岡の皆さんは『オレが』『私が』じゃなくて、『私たちが』と話されること。

こんなに多くの方々が地域に対して愛情を持ち、自分が福岡及び九州どういう立場で何をしなければいけないのかを考えている地域って、他にないんじゃないでしょうか。

それに、皆さん、次はこの人に取材したらとか、私がセールスしておくからとか、純粋に応援してくれるんですよ。

東京で仕事をしていると、相手の裏にどんな真意があるか考えてしまうけど、福岡では裏を読む必要がないから、すごくラクで楽しくて気持ちがいい。

私たちが提供できるものを磨きつつ、クリエイティブやコンテンツで人をワクワクさせながら、福岡や九州のビジネスの成長に貢献していきたいです。

「福岡の今」がたっぷり詰まった『Ambitions FUKUOKA』。機会があれば、ぜひ手に取ってみてほしい。

撮影:井上秀兵(インタビュー)、竹原健介(イベント)

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