「トム・ハンクス児童ポルノ所持で逮捕」は誤り BBC装う偽画像

検証対象

BBCオンラインはトム・ハンクスの真実を簡潔に報じた…児童ポルノ所持135件で逮捕。
(※海外ユーザーの画像付き投稿を引用)

藤原直哉氏(経済アナリスト)のX投稿(2023年12月21日、約900リポスト)

判定

判定の基準について

BBCは実際はこのような報道をしておらず、画像は偽造されたものである。

ファクトチェック

経済アナリストの藤原直哉氏によるこの投稿で、引用された海外ユーザー投稿の添付画像では、イギリスの公共放送局BBCのニュースサイトらしき画面に、次のような見出しが見える。

LIVE Tom Hanks arrested on 135 counts of child porn possession
(※筆者訳:ライブ トム・ハンクス、135点の児童ポルノ所有で逮捕)

見出しの横には、俳優のトム・ハンクスさんとその妻で同じく俳優のリタ・ウィルソンさんの写真がある。

新型コロナ関連の記事を書き換えか

しかし、BBCがこのような報道をした事実は無く、画像はBBCの実際のサイト表示を基に書き換えられたものと考えられる。

この画像は元々2021年6月に海外の個人ブログに掲載されていたもので、その後同月中にSNSで拡散された。当時ファクトチェックしたLead Storiesロイター通信Check Your Factの取材に対し、BBCの担当者はいずれも、BBCでそのような記事が掲載されたことは無いと回答している。他の主要メディアでも、現在まで同様の報道は行われていない。

また、「逮捕」の見出しや写真の下に見える3つの箇条書きの小見出しもポイントだ。転載・拡散された画像では、画質が低くこの部分の文字を判別することは難しい。しかし、元の個人ブログに掲載された画像はやや画質が高く、辛うじて見て取れる文字の形から、BBCの2021年6月18日時点の表示と一致していることが分かる。

上:海外個人ブログに掲載された画像より 下:BBCの2021年6月18日時点の画面より

これらの小見出しは通常、上にある記事と関連する記事へのリンクになっている。そのため、本来新型コロナワクチンについての記事(「新型コロナワクチン1回で入院リスクは75%減少」)の関連として表示されている記事(「どうすれば早く2回目の接種を受けられる?」、「ロックダウンのルールは?」、「新型コロナの疑問に答えます」)が、全く関係の無い「トム・ハンクス、135点の児童ポルノ所有で逮捕」という記事の下に表示されるのは不自然と言える。

以上から、この画像はBBCサイト表示の新型コロナ関連の記事部分を何らかの方法で改変したものと考えられるため、検証対象の投稿は「誤り」と判定する。

ハンクスさんは、ハリウッドスターを含む世界のエリートが悪魔崇拝者や小児性愛者らによる秘密結社を作り暗躍していると主張する運動「Qアノン」からたびたび標的にされている(参照)。未成年に対する多数の性犯罪で逮捕・起訴されたアメリカの実業家ジェフリー・エプスタイン元被告(故人)のプライベートジェットに乗っていた等(参照)、ハンクスさんについての数々の誤った情報がこれまでに拡散されている。

サイトの表示は偽造可能

Lead Storiesは、画像中にGoogle Chromeのデベロッパーツール(開発者用のデバッグツール)の使用時のような表示が見えることから、この画面がデベロッパーツールを使ってサイトの表示要素を変更し偽造されたものである可能性を指摘している。

ニュースサイトやSNSなど、ウェブサイト上の表示は、多少の知識があればこうしたツールを使って自由に変更することが可能だ(参照)。これはあくまでユーザー個人の側の表示が変わるだけでウェブサイトそのものが改竄されるわけではないが、このような方法でスクリーンショット等の画像を偽造した場合、文字のずれやフォントの不整合といった表示上の不自然が生じることは無く、本物との区別は難しい。画像だけでは証拠にならないことに注意が必要だ。

(大谷友也)

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