2050年の人口

 お盆や年末の帰省シーズンが近づくと思い出す俵万智さんの一首がある。〈なんでもない会話/なんでもない笑顔/なんでもないからふるさとが好き〉-平仮名の「なんでもない」が、特別なことは何もないけれど、変わらずにある温かさや安心感を伝える▲その「会話」や「笑顔」の持続可能性が危うい。国立社会保障・人口問題研究所が先に公表した2050年の推計人口によると、本県の人口は86万8817人。20年と比べ、約3分の2まで減少する見通しという▲減少率の高さは秋田、青森、岩手、高知に次いで5番目。人口減少の話題ではとっくに上位ランクの常連、驚くほどの結果ではない…と強がってはみても、数字が突き付ける未来は冷たく、思わずため息▲全国の人口も17%減、人口が増えるのは東京だけ-というから、若者をつなぎ留める努力や他県からの移住を促す施策だけではこの流れは止まるまい▲その場所や地域に一定の人口規模があることを前提にして成り立つ会社や仕事も多い。だから、人口減少は想定をさらに上回るスピードで進む可能性がある▲別の一首。〈ふるさとのよさ/つくづくと見えてきて三十代になるということ〉…大きくうなずきながら、人が一足飛びに“30代”にならないことを思って何回目かのため息をつく。(智)

© 株式会社長崎新聞社