大河『どうする家康』弱虫過ぎ、謎の耳噛み、“異質”な本能寺の変…重厚さに遠かった? 歴史学者が振り返る

松本潤さんが主演を務める大河ドラマ「どうする家康」が、12月17日に最終回を迎えました。今回の大河は、徳川家康が当初「弱虫」という設定でスタートしました。死ぬのが怖いのと、妻子に会いたさに、家臣を見捨てて戦場を離脱する若き日の家康。第1回目は「どうする桶狭間」(1月8日)というサブタイトルでしたが、危機に陥り「どうしたら、ええんじゃー」と泣き叫ぶ家康の姿が脳裏に焼き付いています。

家康と言うと、泰然自若として、少々のことでは動じないイメージですが、今回の家康はそれとは真逆。泣き虫、弱虫の家康としてスタートしたのです。弱虫過ぎて、どうしてこんな主君に家臣は付いていくのだろうと、正直疑問に思うこと度々でした。

家康の盟友とも言うべき、織田信長は岡田准一さんが演じていましたが、登場早々(第1回目)「待ってろよ、俺の白兎(家康のこと)」とドS的、BL(ボーイズラブ)的発言をしたことでも話題となりました。

第15回「姉川でどうする!」(4月23日)では、信長が「乱世を終わらせるのは誰じゃ?」と囁きながら、なぜか、急に家康の耳を甘噛みするシーンがありました。なぜ、急に耳を噛む?これもBLを意識しているのか?と、様々なことが頭に思い浮かびましたが、謎展開であり、印象に残っています。

その信長は、第28回「本能寺の変」(7月23日放送)で家臣の明智光秀に急襲されて死ぬ訳ですが、戦いの場面は大幅に省略されて、回想シーンが挿入されるなど、これまで歴代大河で描かれてきた「本能寺」とは異質であり、記憶に残っています。

今回の大河は「側室をどうする!」(3月12日放送)や「お手付きしてどうする!」(5月21日)など、それを1話かけて描かなくても…という回が個人的には複数ありました。また、ほぼ1話限りで消えていくような人物も複数人いて、もう少し丁寧に描けていたら、感情移入して感動できたのではないかと感じることもありました。

今回の大河は、重厚さとは程遠く、私としては(良くも悪くも)アニメや漫画を観ているようでした。「どうする家康」はネット等を見ていても「反省会タグ」が付けられて、視聴者の批判的見解も多かったように思います。そうした「アンチ」に対し、絶賛派が「嫌なら観なければ良い」などの言葉を投げつけていました。

しかし、どんなダメドラマ、ダメ映画であっても、観る権利はありますし、観ることにより、学べることもあります。誹謗中傷や揚げ足取りは論外ですが、批判的見解が、今後の作品の向上に結び付くこともあるでしょう。

(歴史学者・濱田 浩一郎)

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