「造形の美しさが際立っている」 上原沙也加さん、美術家の登竜門「VOCA展」でダブル受賞 糸満市の写真家

 若手美術家の登竜門として知られる「VOCA(ヴォーカ)展2024」(来年3月14~30日、上野の森美術館)で、沖縄県糸満市の写真家、上原沙也加さん(30)の「幽霊たちの庭」が、奨励賞と大原美術館賞のダブル受賞を果たした。

審査員からは「作品の造形の美しさが際立っている」「成長がすばらしく、数いる先輩を軽々と超える作家」などと評価された。 

 上原さんは今夏、大きな台風のあと、1カ月近く台湾で過ごした。「幽霊たちの庭」は、台湾のとある場所と、そこから持ち帰った物を撮影した写真。制作を通して風景や事物をひたすらに見ながら、沖縄と台湾の歴史、それぞれの時間の重なりと、現在まで続く岐路について考え続けているという。

 受賞に「賞を二つもいただいて、大きな糧を手渡されたように心強く思っています。私がいなくなっても、風景が変わっても、写真は残り、遠くの誰かの元まで届くかもしれない。決して派手な作品ではありませんが、写真の力を信じてよかったと心からうれしく思っています」と話した。

 県関係者では、2002年に照屋勇賢さんが奨励賞、14年に県立芸術大学卒業生の佐藤香菜さんが大原美術館賞を受賞して以来と見られる。

 上原さんは1993年生まれ、東京造形大学卒業。第36回写真の町東川賞新人作家賞受賞。2022年、写真集「眠る木」(赤々舎)を刊行した。

 VOCA賞には、大東忍さんの絵画「風景の拍子」が選ばれた。VOCA展は地域の学芸員、研究者などから選ばれた選考委員が40歳以下の作家1人を推薦。推薦された作家は全員展覧会に出品する。今回は出品作家31人の中から選ばれた。(学芸部・知念清張)

「VOCA展2024」で奨励賞と大原美術館賞を受賞した上原沙也加さんの「幽霊たちの庭」(提供)
上原沙也加さん

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