2024年BTCC参加資格『TBL』リスト公開。リスタート・レーシングがクプラの2台体制を構築

 来季2024年に向け予定されていたエントリー締め切りの延長が発表され、さまざまな憶測が飛び交っていたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権だが、シリーズを運営するTOCAは改めて、12月1日に申請期限切れを迎えたTOCA BTCCライセンス(TBL)のリストを公開。うわさどおり、これまでクプラ陣営として戦ってきたチーム・ハードが姿を消したものの、新たにTCR UK王者のリスタート・レーシングが2台体制を敷き、新規参戦を果たすことが明らかとなった。

 F1で通算“7冠”を誇るルイス・ハミルトンの実弟ニコラスらを擁して参戦したチーム・ハードが、新たなシーズンのグリッドから外れることが正式に確認されたBTCCは、それ以外にも2023年と比べ多くの変化が生じ、ここまで3台体制だったスピードワークス・モータースポーツ(SWM)が新たに追加ライセンス枠を取得。地元法人の支援を受けTOYOTA GAZOO Racing UKとして参戦するファクトリーチームは『トヨタ・カローラGRスポーツ』の4台体制に拡充される。

 そして2022年にクリス・スマイリーとともにTCR UKのタイトルを獲得したリスタート・レーシングが、新たに2台分のライセンス枠を確保してグリッドに加わることが決まった。これにより合計27のTBLが配布されたが、同時に2023年開幕直前にシリーズ撤退を強いられたホンダ陣営の名門チーム・ダイナミクスにとっては、参戦枠の返還がないことも意味する。

「過去3週間だけで最大6台のTBL枠が影響を受ける可能性があったという背景を考慮すると、2024年のエントリーの質と量はBTCCの驚異的な強さと回復力をさらに強調している」と語るのは、TOCA代表を務めるアラン・ゴウ。

 その当事者となった新規参戦リスタート・レーシングは、FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRを投入し、前出のスマイリーとともにTCR UK王者に輝く実績を残してきたが、チームが運営する2台の『クプラ・レオンBTCC』のうち1台を、そのチャンピオンに託すこともアナウンスした。

「リスタート・レーシングと新しいクプラとともに、こうしてBTCCに戻れることに本当に興奮している」と期待を込めるスマイリー。

「これは休むのに適切な期間であり、また復帰するのに最適な時期でもあった。この新しいプロジェクトを立ち上げることができて本当にうれしいよ。BTCCのチャンピオンシップが僕らにとってふさわしい場所であることを知っているし、同時に非常にタフなシリーズでもあることから決して幻想を抱いてはいない。これは僕らのレースチームを強化し、先頭に立つための長期プロジェクトなんだ」

F1で通算”7冠”を誇るルイス・ハミルトンの実弟ニコラスらを擁して参戦したTeam HARDの撤退が明らかになった
ここまで3台体制だったSpeedworks Motorsport(スピードワークス・モータースポーツ/SWM)が新たに追加ライセンス枠を取得。『トヨタ・カローラGR Sport』の4台体制に拡充される
2022年にクリス・スマイリーとともにTCR UKのタイトルを獲得したRestart Racingだが、2023年は新型FL5をいち早く投入した

■ランキング3位のジェイク・ヒルがWSRに残留

 そのリスタート・レーシングとしてはBTCC初参戦となるものの、構成メンバーはワン・モータースポーツに改称される以前の、ホンダ系サテライトとして実績を残したBTCレーシングの人員が多くを占めている。

「BTCCは僕の心の拠りどころであり、もっともレースをしたい場所だ」と続けたスマイリー。

「僕らが獲得し、すでに取り組み始めているクプラを使えば競争するための素晴らしい基盤が得られ、メーカーチームに対するサプライズとしていくつかの得点を獲得することも可能になるだろう。始めるのが待ち切れないね!」

 その強豪ファクトリーチームの一角としてチームBMWを運営する古豪ウエスト・サリー・レーシング(WSR)は、2024年に向けジェイク・ヒルを残留させることに合意。引き続きレーザー・ツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツのエントリー名で3台目の『BMW 330e Mスポーツ』を走らせる。

「すでに2024年に向けてすべての準備が整っているのは驚くべきことだ。すべてをまとめることができた時期としてはこれが最速で、また1年を一緒に過ごせるようにしてくれたレーザー・ツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツの全員に感謝したい」と、2023年は6勝と12回の表彰台を獲得し、ランキング3位のキャリアハイを記録したヒル。

「このパッケージはレースで勝利を収められることをすでに証明しており、舞台裏で進行中のすべての作業を見て、2024年にはさらに良くなることが明らかだと励まされている。参戦10周年を迎えるレーザー・ツール・レーシングにとって大事な年だし、2024年の代表に選ばれて光栄だ。安心してほしい。チーム全員が優勝に向けて全力を尽くし、誰にとっても思い出に残る年になるはずさ」

 そのWSRにジョイントするMBモータースポーツのスポーティングディレクター、マーク・ブランデルも、この2023年に得た結果を基にして、ヒルが「初のBTCCタイトルに挑戦できると確信している」と付け加えた。

「BTCCを知っている人なら誰でも、コースの内外で勝利を収めるために継続性と安定性がいかに重要であるかを知っていると思う。全員が目の前の課題に集中し、2024年に向け基準を高めることができるよう、すべてをまとめることができたのは素晴らしいことだ」と続けた元F1ドライバー。

「彼のペースは誰の目にも明らかであり、我々がさらに強くなるため来季に有効活用できるいくつかの教訓を学んだことは分かっている。またディック・ベネット氏の率いるWSRと、引き続き協力できることをうれしく思う。これまで2年間一緒に成功を収めてきたが、さらに良くなろうと皆がどれほどやる気を持っているかも理解しているよ」

「BTCCは僕の心の拠りどころであり、もっともレースをしたい場所だ」とシリーズ復帰のクリス・スマイリー
最終戦でも勝利を飾ったジェイク・ヒルは、引き続きLaser Tools Racing with MB Motorsportのエントリー名で3台目の『BMW 330e M-Sport』を走らせる
「初のBTCCタイトルに挑戦できると確信している」とマーク・ブランデル(右)

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