【ミャンマー】輸出入低迷、貿易赤字3.8倍の13.7億ドル[経済]

ミャンマーの貿易低迷が続いている。このほど公表された2023年4月1日~12月15日の実績は輸出入共に前年割れで、貿易赤字が前年同期比3.8倍の13億7,000万米ドル(約1,950億円)に膨らんだ。軍事政権は今月、輸出不振の打開に向けて経済統制を緩和したが、通貨チャット安を進行させて輸入コストを増大させるとの懸念が高まっている。

輸出額は同14.9%減の101億4,000万米ドル、輸入額は6.2%減の115億900万米ドルだった。経路別では、海上貿易が輸出入共に2桁のマイナス。陸路を通じた国境貿易で輸出が前年割れだったものの、輸入は新型コロナウイルスの水際対策の影響があった前年の反動で3割以上増えた。

分野別の輸出額は「その他」を除いて軒並み前年割れ。輸出額が大きい工業製品は20.4%減の65億1,000万米ドル、農産品は15.2%減の21億6,000万米ドルだった。財別の輸入額はすべてマイナスで、特に「消費財」「CMP(裁断・縫製・梱包=こんぽう)原材料」が2桁減少した。

■陸路遮断で国境貿易低迷

国境を通じた4カ国への輸出額は◇タイ=6.1%減の24億400万米ドル◇中国=8.1%減の15億2,000万米ドル◇バングラデシュ=39.9%減の1,200万米ドル◇インド=73.8%減の200万米ドル——といずれも落ち込んだ。輸入は、中国からの荷動きが活発で、国境貿易収支の黒字幅が3割以上減少した。

10月下旬からは国境地域などで紛争が激化し陸路が封鎖された影響で、国境貿易が停滞している。三つの少数民族武装勢力が北東部シャン州北部で「作戦1027」を開始した後の10月28日から12月15日までの約1カ月半の国境貿易は、輸出が36.7%減の5億4,500万米ドル、輸入が49.1%減の1億4,200万米ドル。対中貿易は、チンシュエホーが輸出入共に完全に止まっている。

軍政下の中央銀行は今月上旬、中銀が管理するオンライン取引システムを通じた外国為替取引の相場「自由化」と、企業が輸出で稼いだ外貨の現地通貨チャットへの強制両替の対象を輸出額の50%から35%に引き下げる統制緩和を実施。輸出企業にとっては追い風となっている。

ただ、優遇的な為替相場で軍政から外貨を調達してきた燃油輸入業者などにとってはコストが増大。チャットの実勢相場は1米ドル=3,500チャット前後と中銀の定める同2,100チャットから大きく乖離(かいり)しており、今後もチャット安が進めば輸入インフレが加速する恐れがある。

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