[社説]名護の米軍機騒音調査 基地負担は既に深刻だ

 米軍機やオスプレイの騒音被害について、名護市教育委員会が市内の小学5~6年生と中学生に実施したアンケートで、見過ごせない実態が浮き彫りになった。学校で遊んでいる時や授業の際に、飛行機やヘリの音が気になったことが「よくある」または「ある」と答えた割合は61.2%に上った。前回の2014年調査から3.2ポイント増である。

 自由記述では「勉強に集中できない」「とても迷惑。今すぐに止めてほしい」といった苦情だけでなく「戦争はじまるのかと思う」「ヘリコプターが真上を通過するとき、ミサイルのような音がして怖くなって避難した」などと、上空の米軍機におびえている様子もうかがえる。

 今回の調査から加わったヘリ特有の低周波音に関する質問では「気分がいらいらする」「胸や腹が圧迫される感じがする」といった影響が「よくある」「ある」が21.6%だった。頭痛・耳鳴り、眠れないなどと答えた人も約13%ずついた。

 調査は、前回調査の14年時よりも市内の騒音が増えているとして、市民団体が要請。学校生活で子どもたちが一定の被害にさらされ続けていることが裏付けられた。

 名護市内の米軍キャンプ・シュワブ内には複数のヘリパッドがあり、住宅地の上空も使ってヘリが離着陸訓練をする。北部訓練場や伊江島補助飛行場などとを行き交うオスプレイも住宅地上空を飛ぶ。辺野古に新基地ができれば、騒音被害のさらなる深刻化は避けられない。事態を真剣に受け止めるべきである。

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 とりわけ、国立沖縄高専に近いシュワブ内のヘリパッド「フェニックス」は、辺野古区や豊原区などの住宅地上空を飛行しながら、夜間を含めて離着陸訓練するヘリがしばしば目撃されている。

 辺野古漁港に隣接するシュワブ内の砂浜では、米軍のホーバークラフトが上陸訓練を実施することがある。沖合とを行き交う際の騒音は住民の測定で最大100デシベルを超えることもある。

 シュワブ内で行われる米軍の廃弾処理の騒音も長年の懸案だ。辺野古・豊原・久志の久辺3区では、ことし4月までの約12年間で平均88デシベルを記録。住民からは「窓ガラスが揺れるほどの大きな振動が突然襲ってくる。精神的なストレスは非常に大きい」といった声も上がっている。

 名護市では既に騒音を含めた基地被害が顕在化しているのである。これ以上の負担は許されない。

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 新基地建設が進む名護市辺野古の周辺には、集落も保育園も小中学校もある。仮に新基地の運用が始まれば、米軍機がその上空を含めて飛び交う状況は容易に想像できる。

 代執行訴訟でも政府は「普天間飛行場の一日も早い危険性の除去」を強調し、司法は「危険性の放置は公益に反する」と追認する。だが、新基地は普天間の危険性や騒音被害を辺野古に肩代わりさせるだけである。

 何より沖縄だけに負担を押し込める構図に変わりがないことを政府も司法も自覚するべきである。

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