もんたよしのり with 大橋純子「夏女ソニア」パワフルボーカルが調和する奇跡のデュエット!  もんたよしのり with 大橋純子が歌う昭和の名曲「夏女ソニア」を大解剖!

もんたよしのり、大橋純子の相次ぐ訃報…

もんたよしのりさんの早すぎる訃報に接した音楽愛好家の皆さんから、思い出す名曲として「ダンシング・オールナイト」はもちろんだけど「夏女ソニア」も素晴らしい、という声がとても多く挙がっていました。「夏女ソニア」に強い印象を持っていた方が、自分以外にもたくさんいらっしゃることがわかり、改めてこの曲に思いをはせていました。

その涙も乾かぬうちに、まさか大橋純子さんまでもがこんなに早く天に召されてしまうとは…。お二人の相次ぐ訃報は「夏女ソニア」を思い起こす時間を長く強くしています。発売から40年経ってもなお「夏女ソニア」は、なぜこんなにも強い印象を残しているのでしょうか。

時は1983年(昭和58年)。夏の化粧品キャンペーンソングが ラッツ&スター「め組のひと」vs YMO「君に、胸キュン。」という実力派対決で盛り上がっていた中、ラジオ番組『コーセー化粧品 歌謡ベストテン』を聴いていたとき、コーセー化粧品のCMで流れてきた曲に、筆者は一瞬で心を奪われました。

女性の強さや夏のまぶしさを表現する「夏女ソニア」

曲のサビでエネルギッシュに高音を重ねる男女の歌声。聴いた瞬間にそれが大橋純子と、もんたよしのりであると分かりました。当時、2人が同じ北島三郎音楽事務所に所属していたことなどの周辺知識を全く知らなかった筆者は、この組み合わせをとても意外に感じました。ですが、2人の歌声が作り出す雰囲気は素晴らしく、聴けば聴くほどハマっていきました。

大橋純子の歌声は、伸びやかで安定感抜群。歌声や歌い回しに強烈な個性があるタイプではなく、サラッと歌いながらも芯があり、軽やかなのに強いボーカル。これが、女性の強さや夏のまぶしさを表現する「夏女ソニア」に見事にフィットしています。

一方、もんたよしのりの歌声は、ハスキーで歌い回しもとても個性的。もんたよしのりが歌うパートは、Bメロの歌詞では女性を鼓舞し、サビでは夏の暑さを表現していますので、もんたよしのりの個性もまた「夏女ソニア」によくマッチしています。

彼らのような強いボーカル同士の歌声が重なると、お互いの良さを打ち消し合ってしまいそうですが、「夏女ソニア」の大橋純子と、もんたよしのりは、お互いの存在感をむしろ高め合っているように感じられるのです。

大橋純子 の伸びやかな歌声は、もんたよしのり の個性全開の歌声が重なっても、全く存在感を失いません。そして、その伸びやかさが、もんたよしのりのハスキーさや荒々しさをさらに際立たせてくれます。声質や歌い回しの異なる2人の対比が、お互いの歌声の存在感を高める相乗効果を生んでいます。

個性と調和の絶妙なバランス

歌声の対比が際立つ一方で、歌詞のリズムは2人とも正確で、息を合わせて歌っています。それにより、歌詞がはっきりと粒立ち、2人の歌声がグワッと迫ってきます。デュエットというと、自分を少し抑えて溶け合うように声を合わせるイメージがありますが、2人はしっかりと自分の歌唱を貫きつつ、それでも歌声が重なり合っていて、他のデュエット曲には無い独特の一体感があります。

この "個性と調和の絶妙なバランス" が「夏女ソニア」の魅力ではないでしょうか。この曲のクライマックスは、サビの歌詞 「♪なつお〜んな〜 ソ〜ニア〜」の部分。ロングトーンの高音を力強く響かせて重なり合う、大橋純子と、もんたよしのりの歌声は圧巻。何度聴いても、初めて聴いたときの衝撃が蘇り、2人の歌声に聴き入ってしまいます。

ところで、この曲が発売された1983年当時、ポップス系の邦楽デュエット曲はほとんどありませんでした。その頃のデュエット曲は、演歌やバラードが多く、ポップス系の有名曲は「カナダからの手紙」などごく一部でした。さらに、男女パワフルボーカル同士が組んだ曲となると、当時はほぼ無かったと言っていいでしょう。ですから「夏女ソニア」を聴いたとき、とても新鮮に感じて衝撃を受けたのです。

その後は、パワフルボーカル同士のポップス系デュエット曲も数多く制作されるようになり、大黒摩季 & 織田哲郎「憂鬱は眠らない」、つんく & 浜崎あゆみ「LOVE 〜since 1999〜」、久保田利伸 feat. Misia「FLYING EASY LOVING CRAZY」などがヒットしました。しかしながら、このジャンルで様々な楽曲を聴くたびに「夏女ソニア」の圧倒的な完成度を再認識するのです。

大橋純子ともんたよしのりが各々の個性をいかんなく発揮し、歌声の存在感が際立ちつつ、彼らにしか出せない一体感にあふれている「夏女ソニア」は、高音で力強い男女ボーカルがアップテンポで響き渡る、希有な邦楽デュエット曲として、令和の今でも皆さんに強い印象を与える1曲なのです。

カタリベ: 倉重誠

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