「課題はすべて…強くなりたい」熱海富士 “3度目の正直”の賜杯 そして三役へ 同郷の先輩“業師”翠富士と挑む高く分厚い壁

2023年の相撲界に旋風を巻き起こした2人の力士。平幕ながら、秋場所、さらに九州場所と2場所続けて千秋楽まで優勝争いを演じた“大器”熱海富士(21)、そして、“伝家の宝刀”肩透かしを武器に、場所を盛り上げた“業師”翠富士(27)。ここ10年で2人の横綱を輩出し、“日本一の稽古量”として知られる伊勢ケ濱部屋でしのぎを削る2人は、同じ静岡県出身、さらに高校相撲部の先輩・後輩の間柄です。

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2024年1月14日に初日を迎える初場所では、熱海富士が自己最高位となる西前頭筆頭、翠富士も東前頭2枚目へと番付をあげ、ともに三役昇進が射程圏に入りました。さらなる飛躍が期待される2人が目指すものとは。

「当時からデカかった こいつやるな」

12月15日に広島県東広島市で行われた大相撲冬巡業。SBSテレビ「LIVEしずおか」の杉本真子キャスターが2人を訪ねました。

<杉本真子キャスター>
「普段、互いを何と呼び合っていますか」
<熱海富士>
「翠関」
<翠富士>
「いまは(熱海富士の本名)朔太郎か朔。前は(熱海富士のことを)ハス、ハスって呼んでいた。しゃべりかけても『ハス!』しか言わないんで。『頑張っているか?』と聞いても『ハス!』としか言わない」
<杉本アナウンサー>
「いまもそのクセが?」
<翠富士>
「いまでもたまに「ハス!」って言っている」

<熱海富士>
「確かに『ハス』『ハス』言っているんで。言われて気づきました(笑)」

日頃から仲がいいという2人が初めて出会ったのは、熱海富士が小学校6年生、片や翠富士は、飛龍高校相撲部の3年。「当時から自分より(体格が)デカかった。こいつやるな」(翠富士)と、すでに一目置かれる存在だったといいます。それから9年、熱海富士にとって2023年は、破竹の勢いという言葉が、ぴったり合う1年でした。

掴み損ねた賜杯

初入幕となった2022年九州場所では4勝11敗と跳ね返され、十両からの再出発となった2023年初場所も途中休場。しかし、熱海富士はここから奮起します。大阪場所、夏場所と連続で勝ち越すと、名古屋場所で十両初優勝を果たし、再入幕を果たします。

勢いは止まらず、秋場所では、単独トップで千秋楽を迎えます。史上最速、初土俵から18場所目での幕内最高優勝目前でしたが、本割で敗れると、続く優勝決定戦では、大関・貴景勝の“変化”についていけず、賜杯を掴み損ねました。続く九州場所でも、千秋楽まで優勝争いに絡みますが、ここであと一歩届かず。2024年の初場所で、3度目の正直を狙いにいきます。

<熱海富士>
「課題は全部なんすよね。腰も高いし、まわしも取れないし、前にも出れないし、言い出したらキリがないんで、少しでもよくなるように、強くなりたいなって思います」

それでも、わずか7場所で前頭筆頭まで駆け上った熱海富士。これまで、常に熱海富士の前を走る存在だった翠富士は、後輩の躍進が刺激になっているといいます。

<翠富士>
「後輩ですし、抜かれたくない気持ちはあります。そういう気持ちもあって、頑張れているかな」

翠富士が主役に躍り出たのが、3月の大阪場所。身長171cm、体重117㎏の幕内最軽量力士ですが、いまや代名詞といえる「肩透かし」を武器に、大柄の力士を次々と退け、怒とうの10連勝。連日、館内を沸かせました。初優勝の期待がかかりましたが、そこから、まさかの5連敗…静岡県出身力士として初めての幕内最高優勝とはなりませんでした。

<翠富士>
「勝ち越した気はしなかった。最後連敗したんで…自分の実力はこんなもんかなと思う」

「あと一歩」、でも、高く、分厚い壁。それでも2人は、何度も挑み続けます。

<翠富士>
「無心で相撲を取る。まずは三役になるのが目標」
<熱海富士>
「いつも稽古場でやっていることしか場所ではできないので、自分の相撲をもっと磨いて、もっと上の番付に行けたらと思います」

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